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中小企業の人材開発_第3章 「中小企業における人材開発施策」 前半

やっと第3章「中小企業における人材開発施策」まできました!

本書では、人材開発施策を「制度」と「支援」に分けています。制度そのものと、制度に魂をこめるための支援の仕組みですね。「制度はつくったけど、支援がなく機能しない問題」 全国各地で30万件以上、あるある問題ですね。



制度

  • キャリアアップ制度

  • 資格取得支援制度

  • 異動自己申告制度

これらのような、人材開発にまつわる全社レベルの制度そのものですね。


支援の仕組み

  • OJT計画書の策定

  • OJTマニュアルの整備

  • 評価者育成

  • 内定者研修

などを学習支援体制と本では定義されておりました。ここでは簡単に支援の仕組みと書きます。

本章では中小企業がどんな制度や支援の仕組みをもっており、どのように実際に使って、どんな効果を出してるかをデータを用いてあぶりだしています。

そもそも、中小企業は規模が小さく、制度は整っていないとよく言われます。私の実感(めちゃくちゃ少ない事例ですが)でもそうです。

仮に、制度があったとしても、実際に使っているかどうか、どんな成果に貢献してるのか、等は突っ込んで研究されてこなかったようです


人材開発制度の公式化

  • セミナー参加費、書籍購入費の補助 87.7%

  • 目標管理制度           81.5%

  • 資格取得支援制度         68.3%

これらが中小企業での公式化のベスト3でした。これは私の偏見も入っていますが、どうしても国は「資格により一定の質を担保しようとする考え方」で管理しているので、「入札するには◎◎資格保持者が◎◎名必要」とかでしばっており、中小企業が活躍している分野ではその傾向が強いように思います。

ですので、企業も資格取得支援や、そのためのセミナー参加費などを補助することで、資格取得者の確保→仕事の受注→競争優位→持続的な発展につなげようと、制度化していると考えました(そりゃそうだ的な考察ですが・・)

ちなみに、私自身はプロジェクトマネジメントプロフェッショナル(PMP)とカタカナで書くと恥ずかしくなる資格というかcertificate(日本語でなんというのでしょうか)を持ってますが、この試験勉強をしてるときに、国の事業へ入札するにはこの資格を持ってる人が◎名以上必要とかいうのがあると聞いて、びっくりしました。


話をもどすと

ベスト3の次には、キャリアアップ支援制度43.6%、社内資格認定制度37.4%と続きます。

次は、学習支援制度を見てみます


学習支援体制の整備割合

  • 面談・相談機会の創出  93.8%

  • 評価項目の明文化    89.0%

  • 新入社員研修      89.0%

  • 若手・中堅向け研修   86.3%

  • 管理職研修       79.3%

がベスト5でした。本調査の対象企業は、けっこう先進的で、整っている企業なのだなというのがデータからの第一印象です。

本章で特に面白かったのが研修別に、制度と支援体制を見ている箇所。

OJT
OJTの制度自体は7割弱の企業で計画的に実施しているものの、65.2%の企業で計画書の作成、67.0%の企業はマニュアルの作成。特筆すべきは55.9%の企業が指導員の配置を整備している。つまり制度はあるが、OJT指導員(先輩)の配置が難しく、中小企業は人員が不足している実態が見て取れるとしている。

人事評価
93.8%が面談・相談の機会の創出を整備している(=制度はある)
89.0%は評価項目の明文化もされている
69.2%(のみの企業)が評価者の育成を実施
制度は作ったが、それを実行する評価者へのトレーニングが十分にできていないことがうかがわれる。(これは中小企業に限ったことであろうかか?)

性格上、うがった見方をしてしまうのだが、制度をつくる人事部は制度をつくるまでで、実行は現場に丸投げになってる実態がありそうです。

もっと詳しく想像すると、きっと人手不足で、魂を込めた制度の運営まで、とてもできない。やりたくても手がまわらないのが実態なのではと想像してしまいます。

階層別研修

89.0%が新入社員研修あり
86.3%が若手・中堅向け研修あり

管理職関連は、これらより整備割合は低く

  • 候補者、昇格時 65.6%

  • 管理職研修   79.3%

  • 幹部研修    67.0%

数字自体は低いと思わないが、経営者が認識している課題のトップは、「管理職の育成」にも関わらず、実際のデータは低い。ここに、理想と現実のギャップが反映しており、だからこそ最大の課題と感じているのであろう。

ここに見たデータは中小企業丸ごとぶっこんだデータなので、規模別(人数別)に公式化はどのように異なっているのかを見ている。

企業規模による影響

概ね、規模が大きいほど、人材開発制度は整っている傾向があるが、統計的な検定上は、社内資格認定制度のみ統計的に有意であったとのこと。しかし、関連は弱いとしている。

一方、学習支援制度は企業規模と関連せず、規模によらず全体的に整備されているようだ。

要は、企業規模によらず人材開発施策の公式化・整備に大きな違いはないことがわかった

多くの先行研究では、企業規模は人材開発施策の公式化・整備を規定しており、今回の結果とは異なっている。その理由として、人材開発施策の公式化・整備というのは単純に企業規模だけで考えられるようなものでなはなく、もっと複雑で業界の特性などの影響もある。大企業と中小企業の違いとして規模以外に、組織的な要因も考慮すべきでは?とされている。

また、これが一番しっくりきたのだが、もうすでに企業規模によらず人材開発施策は浸透しているのでは?という点である。施策の浸透途中の段階を見ると、企業規模による進捗の差はありそうだが、すでに中小企業でも浸透している現在、制度の公式化や整備については、企業規模で違いを認めるような単純な段階ではもうないのかもしれない。中小企業での人不足が叫ばれていることから、中小企業も人について積極的に投資を始めているという考え方をサポートするのではなかろうか。

長くなりそうなので、企業規模と制度の利用率の関連は、次回へまわします

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