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名言「あー、忙しい忙しい」

TVで見た事がある。

プロジェリアという病気にかかった女の子の話。

子どもでありながら、老人のようになってしまう病気だ。

女の子の名前がアシュリーで、母親がロリー。

そのロリーが書いた本が

「This is my life みじかい命を抱きしめて」。

TVで衝撃を受けていた私は思わず棚からその本を手に取った。

そしてなぜか、エピローグからページを開いていた。

すると、そこには、意外な言葉がならんでいた。

「私にとって過去をたどる作業は、決して楽しいものではありませんでした」
「それをわざわざ自分の記憶から引っ張り出してくることは、ひとつの言葉ごとに1本の針を身体に刺していくように辛いものでした」

なんと、美しい親子物語ではないという。

特にロリーの半生を中心に描いて行くこの本は、ロリーの「ドラッグや暴力などで多くの罪」がオープンになっている。

そのくせ、全体的にあたたかい空気が流れているのは、アシュリーの存在のおかげだろう。

実際、ロリーがアシュリーにドラッグをやっていたときの酷い自分とどうして普通に付き合えたのか尋ねたことがある。

アシュリーの返事はこうだ。

「うーん、私はそんなに気にしてなかったよ。
 だから大丈夫。もう自分を責めないで。」

なんて優しい。

そして、翻訳のせいかもしれないが、なんと大人っぽい表現なのか。

このアシュリーの大人っぽさは、他の件からも伺い見られる。

たとえば、ちょっとしたことでバランスを崩し、部屋の中で転ぶ事も多くなって来ているとき、母親を心配させないためか

「あー、忙しい忙しい」

と言って姿勢を立て直し、何もなかったかのようにまたスタスタと歩いて行ってしまうのだ。

本当に、素晴らしい。

かっこいい。

見習いたい。

すがすがしさたるものあふれんばかりだ。

本当に、心に余裕がある、そんな気がする。

生まれ変わるとしたら、今度は何になりたい?と聞かれると

「もう1回、私を選ぶ」

と答えたアシュリーだからこそ、そんな気がする。

生まれ変わるなら、私はどうがいいだろう?

また、私を選んでも、今の記憶がある方がいい。

二度と同じ嫌な事に出くわさないように・・・

今もっているものは持ってやり直したい。

でも、そんなの、無理。

そんな条件をつけるということは、私はやっぱりアシュリーほどには至ってない。

こんなアシュリーがいるからこそ、ロリーは、最後をこう締めくくっている。

「いつもアシュリーは、そんな私のそばで微笑んでくれた。ある意味では神のように、大きな愛で私を見守ってくれていたのです。」

○○年12月7日8:50 そら☆ 

🌸あとがき🌸

今となっては、上記のような悠長な感想は言えませんが、そのまま掲載することにしました。

当時の私にとっては、アシュリーがたくましく強い人間にしか見えてなかったと正直思います。

病気との長い闘いにおいて、病気とすら呼べない程の、自分のあるがままの姿の中にそのままにある、そのことの意味や状態を、あの時はまだ理解していなかったと思います。

しかし、アシュリーの中で、どのような苦悩や葛藤があったかは、想像して推し量ることもできるものな気がします。

アシュリーの手記ではないので、アシュリーが心の中で、人知れず何を思っていたかは分かりませんが、アシュリーのこうした生きる姿と出会えたことに感謝します。

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