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ほぼ単一民族であり、島国で長年の鎖国など他国・他文化との交流も限られた環境で、同様の文化や価値観を共有する人達と和を重んじて来た日本社会には、強力な同調圧力が存在します。

この強力な同調圧力を嫌い、日本から出る事を決断する人達も少なくありません。多くの人が躊躇する事に挑戦し、人とは違う自分に価値を感じ、付和雷同になりがちな周囲に違和感を持って育った私も、そんな同調圧力から逃れて日本から出る決断をした一人です。

しかし、日本を出て外から見たからこそ、強力な同調圧力の中で鍛え磨かれた日本の強みにも気づきました。日本特有の環境を生き抜く為に鍛えられた「関わる人を慮り、空気を読める力」、日本の幅広い層が持つ特殊能力です。 


グローバル社会では、個人がそれぞれの個性を持ち、それぞれが違う事、多様性が高い事が当たり前の環境です。 自分とは全く異なる環境、文化、生き方や考え方、価値観が多様に存在しています。そして、このように多様性が高く同調圧力の限られたグローバル社会では、相対的に周囲を慮り気遣うよりも、個人の自立性が重んじられます。個人の自律性や独自性、個人の自由、個人の独自の価値観・主義主張が、弱肉強食の環境で生き抜く事に必要なのです。

つまり、個人の自立性を重んじ、周囲を慮り気遣う事が相対的に限られる弱肉強食のグローバル社会においては、「関わる人を慮り、空気を読める力」能力を養える環境が非常に限られます。

震災の際でも規律が守られた日本社会や、サッカーの国際試合観戦後の日本人サポーターによる清掃活動など、日本の「関わる人を慮り、空気を読める力」がグローバル社会からの賞賛を受けた事を記憶されている方も多いと思います。

また、地球や自然、周囲を慮るサステナビリティの重要性にようやくグローバルの社会の目が向いている事からも、日本社会では当たり前の「関わる人を慮り、空気を読める力」が、特別な力だと理解されている事が解ります。

そして、この「関わる人を慮り、空気を読める力」には、これから日本人が能力として養いたい、グローバル社会の多様性に適応していく事にも力を発揮します。多様性への適応能力は、日本の大きな課題の一つなので、驚かれるかもしれません。日本特有の強力な同調圧力に鍛えられた特殊能力と、グローバル社会の多様性には関連性を全く無いように感じる方も多いかと思いまれます。

しかし、日本で多様性への適応能力が身につけ難いのは、多様性を経験できる環境が無かっただけだと私は考えます。一度海外に出て、多様性のある環境に触れて、多様な文化や価値観に興味を持ち、多様性がある社会に存在する様々な背景を持つ人々を慮れれば、複雑で多様性のある空気も読めて力にできるという事です。

私には世界的IT企業のアメリカ本社で、大手日系企業を担当する営業責任者を務めた経験があります。意思決定に関わるお客様はほぼアメリカ人でした。社内では専任の担当者は限られましたが、当時総勢40名を超すアメリカ人社員を取りまとめるリーダー(本部長職)でした。
言語や文化の違いには勿論苦労する事も多くありましたが、日本で鍛えられた「関わる人を慮り、空気を読める力」が、完璧には程遠い英語でのコミュニケーション能力を補い、お客様との良好な信頼関係とより高いパフォーマンスを発揮するチームワークの醸成に役立ちました。

社内のメンバーは世界的企業に所属するその道のプロフェッショナルな人達であり、恵まれた環境ではありましたが、一方で、隙あれば手柄の横取り・相乗り・タダ乗りも厭わない多様な人も当たり前のように存在しました。 また、お客様や社会への価値提供よりも、一方的に自社や自分の得るものだけに関心が高すぎる人達も少なくありませんでした。

そのような環境でも「関わる人を慮り、空気を読める力」を発揮して、お客様や関わる人に役立とうとする姿勢、共通のゴールを探す姿勢のお蔭で、お客様やチームメンバーからの信頼を得る事が出来、求められる以上のパフォーマンスを発揮する事が出来たのです。

「今まで働いた事のあるどのリーダーよりも一緒に働けて楽しかった。日本の特別な素晴らしさを尊敬する」と、当時の同僚達から伝えられたのは、グローバルで働く中で日本人の価値を感じられた嬉しく誇らしい思い出です。

弱肉強食のグローバル社会には、他人を慮る事を知らず、空気を読めない人が少なくありません。そんな環境で、「関わる人を慮り、空気を読める力」という日本特有の強力な同調圧力に鍛え磨かれた特殊能力が生き抜く為の大きな力となりす。

日本には空気を過剰に読み忖度し過ぎて、行動の選択肢を持っている事を忘れる人も少なくないですが、本来、空気を読める人には、当然敢えて読まない行動を含めて行動の選択が可能です。 (一方でグローバルの多勢を占める空気を読めない人にはその選択肢がありません。)

日本に鍛えて貰った「関わる人を慮り、空気を読める力」という特殊能力を発揮して、より広い視野で取るべき行動を選択し、世界を更に豊かにする取り組みに役立ちたいと思います。





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