読書の記録

  2009年から2011年まで、読書メーターで読書の記録をつけていた。二十代前半の、あの頃の瑞々しい感性を残しておきたくて、気に入っている本の感想をこちらに書き写しておこうと思う。

すいかの匂い 江國香織

  恐怖にはキャーとか、ギャーとか思わず叫んでしまう類のものと背筋がひんやりするような、静かなものとの、二種類があると思う。この作品は正しく後者。江國さんの描く子供って、どこか屈折していて、健全じゃなくて、わたしもそういう子供だったからか、なぜだか安心します。2009/05/08

東京タワー 江國香織

  読書をすることが好きになった、きっかけの本です。湿度のある、静かな、けれど激しい恋の物語。不倫という、決して道徳的とは言えない行為を、こんなにも美しく描いた本をわたしは他に知りません。これからも何度も読み返すだろうと思う。2009/07/04

ぼくの小鳥ちゃん 江國香織

  童話のようでも、恋愛小説のようでもある、ぼくの小鳥ちゃん。甘く、ゆるやかに、満たされていく感じのするとても素敵なお話でした。角田光代さんの解説もすき。わたしがこの物語をこんなにも心地よく感じたのは、小鳥ちゃんに感情移入していたからだって、解説を読んではじめて気づかされた。それから、江國さんの作品の中にでてくる食べ物。ラム酒をかけたアイスクリームって。どうして彼女の描く食べ物はこんなにも魅力的なんだろう。2009/07/24

すきまのおともだちたち 江國香織

  おときばなしのように現実離れした、とても素敵な物語。私の〝すきまのおともだち〟の女の子とお皿。陽気で、けれど、どこか儚さのあるふたりが魅力的で、お話にぐんぐん惹きこまれてしまいます。いつのまにか読者の私も、女の子とお皿のお客様になった気分に。子供が読んでもたのしめると思います。2009/08/10

ホテルカクタス 江國香織

  登場するのが帽子と、きゅうりと、数字の2、ということを除けば、ごく普通の大人の友情の物語。愉しく、温かいのに、どこかセンチメンタルな気分になるのは、帽子は帽子できゅうりはきゅうり、数字の2は数字の2という、別々のものだからかもしれません。彼らは全くちがう。性格も、好きな音楽も、好きな飲みものも。このお話は「個性」というものを教えてくれている気がして、将来子供をもつことがあったら、子供にも読んでほしい一冊です。2009/08/23

  江國香織さんを偏愛していた十年前のわたし。感じ方も文章の書き方も、今とあまり変わらないような気もするのだけれど。




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