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『 果物 』


  秋になると


  果物はなにもかも 忘れてしまって


  うっとりと 実のってゆくらしい

                  八木重吉 詩集 『貧しき信徒』より

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重吉さんは

この時どんな心情だったのだろう、と

想いを重ねてみたりします。

悲しみや絶望のさなかでも

すべての事象に

慈愛あふれる

やさしいまなざしを

貫いていらしたことが

彼の詩歌の

どの言葉からも感じられて

まっすぐに心を打たれずにはいられません。


何もかも

忘れてしまって

実ってゆく、って

何てすてきなんだろう。

しかも

うっとり、と。

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