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ReDesign Talk「住民と共に創る地域DX」 (第1回)住民共創の本質、DXの本質とは?

弊社では、地域DXを進めるうえで、「住民と共に創る」というアプローチが重要と考えています。そこで、なぜ住民と共に創ることが重要なのか、その際にどのような手法が有用なのか、気を付けるべきポイントは何かなどについてReDesign Talk「住民と共に創る地域DX」と題したセミナーを2022年4月26日(火)にお届けしました。
ゲストスピーカーとして、三重県CDO(最高デジタル責任者)田中淳一さん、北欧研究所代表 ロスキレ大学准教授 安岡美佳さんをお招きしました。

なぜ、本イベントを開催したのか

弊社では、「地域DX」に関するコンサルティングサービスを提供しています。そのなかでも「住民共創」を1つの軸として掲げています。デンマークは、デジタル社会形成の先進国であることはもちろん、幸福度や住みやすい都市でも世界1位を獲得するなど、国民にとって幸せな社会を国民と共に創るというアプローチを実践しているという点で、地域DXについて学ぶべき点が多い国です。また、三重県では「あったかいDX」を掲げて、県民とともに未来のありたい社会の姿を構想し、そこからバックキャスティングする手法で地域DXを進めようとしています。そこで、今回は、デンマークのデジタル社会形成や住民共創に詳しい安岡さんと、三重県CDOの田中さんとの対話を通じて、「地域DXの本質とは何か」「住民共創の本質とは何か」を深掘りし、地域の未来を描くヒントを探りたい、と考えました。
私見で恐縮ですが、以下は、「地域DXがなぜ必要か」について我々の考え方をまとめたものです。

地域を取り巻く環境は大きく変化し、人口減少や少子高齢化、環境問題、インフラクライシスなど、今後従来の手法では解決できないパラダイムシフトが起きることが予測されており、地域の持続性が危ぶまれています。
また、社会システムの変容が顕在化しており、システム同士が自律的につながり一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる人間中心の社会を形成しようとする動きもみられます。
こういった変化は、地域社会において「前例」にこだわらない新たな解決手法を生み出していくことを要請しています。さらにはVUCAの時代と言われる通り、不確実性が高く、デジタルがその変化を加速していく時代においては、これらの変化がさらに大きくなっていくことから、対応は急務といえます。
一方で行政は、これまでトップダウンの固定的なガバナンスを踏襲してきており、多様性や変化への対応が難しいという側面があります。また、行政には「無謬性」という、失敗できない文化が存在し、住民の課題に寄り添って改善を繰り返すことが難しいという指摘もあります。そのため従来の行政的手法で地域課題を解決していくことの限界が来ているといえるでしょう。

プレゼン① 三重県CDO(最高デジタル責任者) 田中 淳一

最初に、田中さんからプレゼンがありました(以下は、その要約)

三重県 デジタル社会推進局が制作された
はじまる はじめる みえのDX 〜 みんなでつくるデジタル社会 〜
のYouTube動画をご覧いただくところから始まりました。
この動画は、三重県デジタル社会の未来像をとりまとめるにあたって、県民の皆さんの声を集め、県民の皆さんと一緒に作っていくプロセスを記録として残したものです。
「誰もが住みたい場所に住み続けられる三重県」に向かって、みんなの想いを実現する "あったかいDX" を推進することが伝わりました。

三重県が作成した「三重県デジタル社会の未来像」は、バックキャスティング手法で県民の皆さんと一緒につくった未来像であるとのことで、これまでの行政のやり方(行政が計画を立てて市民はそれに従う)とは異なる手法にチャレンジされていると感じます。
この「デジタル社会の未来像」の中で、DXを通じた理想の社会の姿として、「DXによって、県民の皆様の時間に余裕が生まれ、家族や恋人との時間や趣味の時間、学びの時間として活用できるようになり、幸福実感が向上していくことにつながる」を挙げており、デジタル化が目的ではない、ということがよく分かります。三重県デジタル社会の未来像は、弊社が作成に関わったもので、弊社としても思い入れの強いものです。一読の価値があるので、せひ一度ご覧ください!

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プレゼン② 北欧研究所代表 ロスキレ大学准教授 安岡 美佳

つぎに、安岡さんからプレゼンをいただきました。
デンマークにおけるデジタルサービスの事例やデジタル化社会進展の恩恵についてご紹介いただきました。

昔は、デンマークは福祉などが有名というイメージだったかと思いますが、最近では、デンマーク=幸せ×デジタルというイメージもあり着目されるようになっているとのことです。
デンマークの現状として、カギとなっているのは、CPR(個人番号)です。日本で言うマイナンバーみたいなもので、デンマークの新しい個人認証システムMitIDはとても便利であるとの紹介がありました。

最後に、デジタル化進展の恩恵として、
・産業育成やイノベーションが起こっている
・生産性が向上している
・サービス向上が図れる
・サービス維持が簡単
・SDGsへの対応に先手を打てた
・レジリエンスが高まっている
・生活者として便利さを感じられる
・暮らしやすい
ことが挙げらるとのプレゼンがありました。

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パネルディスカッション


登壇者2名の話を踏まえ、弊社アソシエイトパートナー河本氏がモデレータとし入り、パネルディスカッションを実施しました。

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パネルディスカッションで印象的だった点を紹介します。

●地域DXで大事なのことは、デジタルよりもX(変革)の方であり、デジタルに詳しい必要は必ずしもない

●デジタル社会形成を何のために行うのかという目的意識を国全体で、あるいは市民と共有しなければならない。デンマークでは利便性のためではなく「人口減少が進むなかで産業転換を進めるため」のDXであった

●デジタル社会形成のためには、市民と政府との間のコミュニケーションデザインが重要(動画を用いたり、デジタルなコミュニケーション方法にシフトしていったりなど)

●議論するときは声が大きい人が勝ってしまったりするが、声が小さい人の意見も拾っていくためには、共創・対話のためのルールみたいなものも大事

全部は紹介しきれないので、詳しくは、以下のアーカイブ動画をご覧ください。

220426_ReDesign Talk「住民と共に創る地域DX」第1回 住民共創の本質、DXの本質とは?

今回の議論を通じて、地域DXにおいては住民との共創が重要なこと、デジタル活用を考える前になんのためにやっているか、社会がどこに向かっていく必要があるか、丁寧に説明する必要があること、など多くの学びが得られました。

安岡さんからは、幸せな社会をつくるためにデジタルを活用する、という考え方が大事である。
田中さんからは、時代の転換期を迎える中で正解は誰もわからない。だからこそ、住民と共にどんな未来が作れるかを考えていくことが大事である。
ということを最後に一言おっしゃれられていました。

今後、地域DXを推進しようとする自治体や民間企業にとって参考になる示唆が提供できていれば幸いです。

最後に

弊社では、地域DXに関するコンサルティングサービスを行っています。
ご興味のある方はお気軽にお問合せいただければと思います。

ご登壇いただいた田中さん、安岡さん、当日視聴された皆さま、ありがとうございました。

第2回(ReDesign Talk 住民と共に創る地域DX ~新しいコモンズを共創するリビングラボ~)は、5月31日13:30開催です。



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