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【AND PET】#10 汗をかいていますか?

猫が汗をかくのは体のほんの一部だけ

先日、「汗をかきにくい人ほど汗臭、脇臭いはにおいやすい。気になる女性のにおい対策」という記事を公開しました。汗をかきやすいこの季節には特に気になる内容です。そういえば、猫が汗をかいている印象は、あまりありません。

毛皮をまとった動物はみるからに暑そうですが、我が家の猫、ぼたんは冷房が苦手。冷房をつけるといつの間にか他の部屋に移動しています。ぼたんのために用意したひんやりマットもアルミプレートも、残念ながら一度も使われずじまい。外出時には冷房をつけず、防犯と脱走の対策を行った上で窓を開けていますが、それで平気な様子です。

猫の体温は人間より2~3℃高めで、ぼたんも病院で測ってもらうと38℃台。そのため、適温と感じる温度が私たちより高いそうです。冷たい空気が下に溜まりやすいことも、低い場所で生活する猫に影響しているのかもしれません。また、猫がもともと砂漠で暮らしていたのも暑さに強い一因と考えられます。

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35℃を超える暑さの中、お散歩をしていた猫。日陰を選んで歩いています。

干したばかりのホカホカの布団の上で、西日を浴びながら寝ていることもあるぼたん。そんな時に体を触っても汗をかいていると感じたことはなく、においも気になりません。調べてみたところ、猫が汗をかくのは肉球だけで、毛の生えている箇所、つまり体の大部分からは汗が出ないようです。

そういえば、何かのスイッチが入って走り回っているぼたんが、突然ターンしたり急ブレーキをかけたりすると、「キュッ」という音が聞こえることがあります。例えるなら、バスケットボールをしている時にシューズが床とこすれて鳴る音。これも、肉球が汗で湿っているからなのでしょう。

人間は汗をかいて体温調節を行っています。肉球からの限られた量の汗だけで体温を下げられるのか疑問でしたが、猫は体をなめることでも体温を下げているようです。それでもやはり体温調節があまり得意ではないとのこと。

我が家では熱中症対策として、水が飲みやすいようにあちこちに水飲み用のボウルを置いたり、ブラッシングをこまめに行って被毛の風通しをよくしたりしていますが(昨年はブラッシングをしすぎて地肌が透けてしまいました。反省)、今後、ぼたんが歳を重ねていく中ではさらなる対策も考えた方がよさそうです。

汗をかく動物、かかない動物


では、他の動物はどのような汗をかいているのでしょう。

犬も猫と同じく肉球でしか汗をかきません。体をなめる代わりに口を開けてハァハァと呼吸をすることで体温調節を行いますが、急激に暑くなると熱中症になってしまうことも。

犬種によっても暑さへの強さ・弱さに違いがあるようで、パグやブルドックのような鼻筋の短い犬は気道が狭く呼吸がしにくいことから体温調節がより苦手とされています。また、シベリアンハスキーなど寒い地域にルーツのある犬も被毛が密に生えているため暑さに弱いといいます。

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マンガ「動物のお医者さん」にもハスキーが熱中症になるエピソードがありました。

一方、被毛に覆われながらも人間と同じように全身から汗をかいて体温調節を行う動物もいます。それは馬。競馬を見ながら、体が汗でテカテカしているだけでなく「足や股の部分が白くなっているのは何だろう?」と疑問に思っていましたが、その白いものの正体も汗でした。

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気温の変化で汗をかく人間とは違い馬は走ったり興奮したりした時に汗をかきます。

馬の汗には界面活性剤と同様の役割を果たすラセリンという物質が含まれているため、肌同士や鞍などでこすれる部分では泡立って白くなるのだとか。ラセリンは被毛に覆われた全身に汗を広げ、体温を下げるのに役立っているそうです。

象やウサギは汗ではなく、大きな耳から熱を発散することで体温を調整します。カバは赤やオレンジの色素を持つ赤っぽい汗をかきますが、これは日焼け止めの役割を果たすもの。爬虫類や両生類などの変温動物はもちろん、水中で暮らす哺乳類も、同じ恒温動物の鳥も汗をかきません。汗に悩まされる生き物は、どうやら人間しかいないようです。

文・横山珠世
女一人と猫一匹の暮らしから人と猫が共に健康で幸せに生きていく術を考える、株式会社ジャパンライフデザインシステムズの編集兼ライター。『セルフドクター』や書籍などの制作・発行に携わる。