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[論文メモ] 猟犬のhoming strategy

Benediktová et al. (2020)
Magnetic alignment enhances homing efficiency of hunting dogs
eLife 2020; 9:e55080, DOI: 10.7554/eLife.55080 [オリジナル論文]

背景と方法:
・猟犬は獲物を追いかけて飼い主から数100〜数1000 m 離れることがある(=excursion)。そこから飼い主の場所(=獲物を追いかけ始めた場所)へ戻るとき、もと来たルートを嗅覚を使ってたどる場合(tracking)と新しいルートを使う場合(scounting)がある。

・trackingは確実だが移動距離がかさむ、scountingはナビゲーションエラーのリスクがあるが目的地への近道を使える、というトレードオフがあると考えられる。

→ 27頭の猟犬にGPS首輪とアクションカメラをつけて森林エリアでの帰巣行動を記録。trackingとscouting、それぞれにおける実際の移動距離や移動速度、homing efficiency、移動経路の特徴を調べた。


主な結果:
・記録された帰巣ルート622中、399はtracking、223はscouting、50はtrackingからscoutingに移行するパターンだった。

・excursion開始時の移動方位およびhoming開始点から見たexcursion開始点の方位はランダムに分布していた。つまり、いつも同じ方角に帰ればいいという状況ではない。

・homing開始時の移動方位は、trackingのときはランダムだったが、scoutingのときには地磁気の南北軸に沿っていた(magnetic alignment)。約20 mくらい磁南北軸に沿って移動("compass run")したあと、scoutingを始めることが多かった。Fig. 2Bを見ると、trackingからscoutingに移行するときにもcompass runがあるっぽい。
※ 地磁気以外の要素も検討されている

・trackingよりもscoutingのほうが移動速度が大きくなっていた(予測通り)。


"compass run" はなんのため?:
・magnetic alignmentは様々な動物で報告されているが、その機能ははっきりしていない。

・猟犬がcompass runをする理由もまだ明らかではないが、path integrationで蓄積したエラーを補正するための行動かもしれない(地磁気をuniversal reference frameとして利用)。


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おもしろかったところ:
・戻るべき場所が毎回変わるタイプのhomingは珍しい。難易度がより高そう。

・往路では獲物を追いながら動いているにもかかわらず、道に迷わないのすごい...

・飼い主と一緒に歩いている期間の経路を見るとジグザグしてるように見えるのはやっぱり匂いで探してるからだろうか。

・論文にも書いてあるようにmagnetic alignmentの話はちょくちょく見かけるけど、ミステリアス。magnetic compass(地磁気を基準に任意の方位を選べる)をキャリブレーションするためのmagnetic alignmentという可能性もあるんだろうか。


疑問:
・Figure 4のtrack length vs beelineのグラフをtrackingとscoutingで比較したらhoming efficiencyの違いが見られそうだけどその結果はなさそう。

・Figure 5でforest path(人工?)を通った場合とそれ以外の場合の比較があるけれど、forest pathはどういう風に存在しているのだろう。重要そうだけど情報が少なく感じた。

※ どちらも見落としてるだけかも



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