[論文メモ] 偏光ナビゲーション

2018.9.14 おもしろい論文レポート[17]

Bioinspired polarization vision enables underwater geolocalization
Powell et al. Science Advances 4:eaao6841 (2018)

【要約】
水中で計測した偏光パターンから、現在地をどの程度の精度で推定できるかを検証した論文。

甲殻類を中心とした陸上動物では、空中の偏光パターンから方位を知る「偏光コンパス」を持っていることがよく知られている。一方、光の屈折や散乱がある水中でも偏光パターンから方位情報を取得できるのかについては専門家の意見が分かれていた。また、理論的には、偏光パターンから方位情報だけでなく位置情報も取得できるはずである。そこで本研究では、Mantis shrimp(シャコ目)の偏光受容器を模倣した偏光計測器を複数の地点で海中に設置し、偏光パターンから推定した方位および位置を計測器の方位・位置と比較した。

その結果、この方法で平均61 kmの誤差で位置推定ができることが明らかになった。

【客観的な意義】
・水中の偏光パターンから、方位と位置を推定できることを実証した。
・水中での長距離ナビゲーション技術の向上に役立つ可能性がある。

【おもしろいと思ったポイント】
・ナビゲーションメカニズムに関する仮説は数十年前から大きく変わらない印象があるため、新しいメカニズムを提唱しているこの論文を読んで、まだ伸びしろがあるのだと感じられた。

・潜水動物の水中ナビゲーションについても、ほとんど何もわかっていない。陸上動物と違うメカニズムがあったらよりおもしろいと思った。

【調べようと思ったこと】
・偏光受容器というのはどのような構造をしているのか。この論文ではシャコの受容器を模倣したとあるが、他の動物では違いがあるものなのか。

・ある動物が偏光を知覚できるかどうかを知るためには、何を調べたらいいのか。視細胞からわかる?

・偏光パターンから方位や位置を算出する方法をよく理解できていないので要勉強。

・動物に載せられるサイズの偏光ロガーは実現可能?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?