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鳥類のナビゲーション研究 [2]-3

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生物の科学 遺伝 2017年11月号『特集 生物のナビゲーションを科学する』に寄稿した内容を分割して公開しています

元記事のPDF↓

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鳥類のナビゲーション研究 [1]
鳥類のナビゲーション研究 [2]-1
鳥類のナビゲーション研究 [2]-2

(3) メカニズムの検証

1960 年代,スズメ目(鳴禽類)の渡りにおけるナビゲーションメカニズムを調べるために,素朴だがとても便利な装置が発明された。「エムレン漏斗」である(図 3)[ref 16]。「エムレン」は,この装置を考えだした研究者の名前で,エムレン漏斗は今もなお現役の実験道具である。

スクリーンショット 2020-05-16 10.09.18

渡りの季節に渡り鳥をじょうご型の容器に入れると,目的地の方角に向かってぴょんぴょんと飛び跳ねる(渡り衝動 migration restlessnessとよばれる)。容器の底にインクを染み込ませた台を置いておけば,容器の側面にたくさんの足跡がスタンプのように残される。この足跡は,その渡り鳥が「渡るべき方位」 として知覚している方角に集中するという仕組みである。

実験室で磁場を人為的に変化させると,エムレン漏斗に入れた鳥の向かおうとする方角も変化することがわかった。さらにその変化の仕方を分析した結果,磁気ベクトルの向き(=磁極)ではなく, 傾き(=伏角)によって方位を知覚している ことが示された [ref 17]。また,プラネタリウムの中にエムレン漏斗を置いて実験した例もあり,その年に生まれた若い鳥が星の動きを学習して方位情報を知覚できるようになることが確認された [ref 18]。


つづく

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