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これからの地域に必要な「ドーナツ人材」とは?

皆さんこんにちは、一般社団法人ローカルコワークアソシエーション(LOCO)です。2024年9月に福岡での「ドーナツ人材」をテーマにしたトークイベントの開催が決定しました。そこで、LOCOメンバー(坂本、鈴木、森川)でリレー形式でイベントへの想いをnoteに書いていくことにしました。第一弾は、坂本が担当します。ぜひ、読んでいただけると嬉しいです。


ローカルエリアにおけるコワーキングスペースの可能性

みなさま、あらためまして、一般社団法人ローカルコワークアソシエーション(LOCO)の坂本です。僕は人口1,500人の山村、奈良県東吉野村を活動の拠点としています。いまから19年前にこの村に移住し、2015年に企画・デザイン・運営を担う「オフィスキャンプ東吉野」というコワーキングスペースを開いたことが、LOCOの活動のきっかけになっています。

山村のコワーキングスペースは、当初の予想に反する盛況ぶりで、利用者の幾人かが移住を決めてくれ、そのうちの何名かと一緒に立ち上げた「合同会社オフィスキャンプ」は、クリエイティブファームとして現在も活動しており、企画・デザイン・コンサルティングなど幅広い分野の仕事を横断的に行っています。

山村にコワーキングスペースという、用途を持たない場を開いたことにより、たくさんの出会いが生まれ、その先に移住や、起業、場合によっては恋愛なんかも生まれ、村に活気が戻ってきました。

そんな実体験をもとに「ローカルエリアにコワーキングスペースができれば、その地域に良い影響があるのではないか?」という仮説のもと、想いを同じくする仲間と立ち上げたのがLOCOです。

都市のコワーキングスペースは不動産目線の新規事業として、またはデベロッパのリーシング先として、主に利便性の高い場所で事業として運営されています。

しかし、ローカルにあるコワーキングスペースは、そもそも都市にあるビジネスモデルがワークしないので、まったく違う文脈からアプローチしないとなりたちません。

考えていただくと、当然だと思うのですが、1日の乗降客数が数万人もいるような駅のそばのコワーキングスペースと、週末にはバスも走らないような村にあるコワーキングスペースは、同じように利用料で稼ぐモデルは適用できないわけです。

LOCOでは、そのような、なりたち難い地域で「コワーキングスペース」を立ち上げたいという想いを持った人たちに、僕たちが複数の地域で実際に施設を運営することで得た知見をお伝えし、立ち上げを支援するような事業をおこなっています。

僕は地域(ローカルエリア)にこそ、コワーキングスペースはあるべきだと思っています。近代以降、地域から都市への人の流れは途絶えることがなく、逆向きの流れをなんとか起こそうと、地方創生も始まってはいますが、流れが逆転することはありません。

地域が過疎になるにつれ、土着の産業は機能不全をおこし、新たな事業や産業はおこるはずもなく、地域は長い間負のスパイラルに入っています。

しかし、そのおかげで、残ったものもあります。それは、成長を目指してもできない地域だからこそ、定常的な営みを続けるしかなかった。つまり、近代以前よりつづく、変わらない暮らしや環境がそこにあったのです。

資本主義が最も効率的に駆動する都市とは違い、近代以前より続く「弱い資本主義」のようなものが駆動する地域で、その流儀に沿った事業なり産業、いや、もっと密かな小商いのようなものが地域にあるコワーキングスペースを通して生まれることにより、都市とは違う成熟的発展が地域だからこそ起こる可能性があると僕は思います。

おもしろい地域には、おもしろい場があり、おもしろいプレーヤーがいる

今、日本全国の地域では、コワーキングスペースやゲストハウス、カフェや道の駅など、さまざまな「場」と呼ばれる、ビジネスだけを行動原理にしない施設が複数生まれ、その場をステージにプレイヤーと呼ばれる人たちが活動しています。

「あの地域はおもしろいよ」と言われて伺った地域には、必ず「場」があり、そこにはプレイヤーと呼ばれる人がいます。みなさんも、そんな話を耳にしたことはあると思いますし、実際にその場を訪れ、プレイヤーと呼ばれるような人に会った方もいると思います。

それくらい、今地域では、新たな動きを仕掛ける人たちが集まっています。

しかし、各地域が横並びで発展しているかといえば必ずしもそうではなく、地域の発展スピードはまちまちです。

その差はいったいどこにあるんだろう?

そんな疑問から、この後お話しする
「ドーナツ人材」という言葉は生まれました。

これからの地域に必要な「ドーナツ人材」とは?

ドーナツ人材を語る前に、地域の発展を簡単な図であらわしてみました。

上図のように、アーリーなステージは、地域内でのプレイヤーやステークホルダー、各セクターはそれぞれ独立して活動しています。

より面白くなっている地域では、プレイヤーやステークホルダー、各セクターがネットワークされ、互いに関係性が生まれ作用しあっています。(エクスパンションステージ)

アーリーからエクスパンションへステージが移行することは、放っておけばそうなるかというとそうではなく、いつまでもアーリーなステージなままの地域もあります。(それが悪いわけでもないとは思うのですが)

このステージが移行するかしないかが、地域の発展スピードに大きく関係していると思います。また、そのステージの移行を後押しする存在が「ドーナツ人材」なのです。

またまた、図をご覧ください。

この図のように、プレイヤーと、ステークホルダー、各セクターとの間にある青いドーナツ状のラインにいるのがドーナツ人材です。

この人たちは、「コミュニティコーディネーター」や「プロジェクトマネージャー」「プロデューサー」などと呼ばれていることが多いです。

都市では、職種として確立されているのですが、地域の難しいところは、「関係性の構築、プロジェクトの進行、プロジェクトにおける最適な座組」など見えない資産を生み出している職能の人たちが、依頼されるような類の事業規模や、予算規模が無いというところです。

仮に「戦略」「戦術」「戦闘」というふうに、地域の活動をわけて考えてみると「戦略」「戦術」フェイズで主に機能するようなタイプの人たちが、僕たちが思う「ドーナツ人材」なのです。

「ドーナツ人材」の現在

地域の発展にドーナツ人材がいるなら、バンバン送り出せばいいじゃないか?

そうは問屋が卸さないのは、目に見える資産を生み出さない仕事に対して、正当な予算を当てれないわけです。であるなら、発展している地域における「ドーナツ人材」達は、いったいどうやって、お金にならない、見えない資産を産む活動を継続的に行なっているのか?

それは、地域におけるコワーキングスペースの継続問題と重なる点があります。
有り体に言うと、その活動以外でお金を生んでいる。と言うことです。

ドーナツ人材の多くは、プレイヤーが出世魚のように、職種を変えて、または複数の役割を同時にこなしているケースが多いです。
プレイヤーとして、きちんと地域に根を張り、自分たちが糊口をしのぐことはできた。そんなプレイヤーが、もう少し俯瞰して地域を眺めてみることで、ドーナツ人材化してくのだと思います。
その他のケースでは、各セクターの職員が、業務の幅を拡張して、行なっていたり。
地域の世話焼きおじさん、おばさんなんかも、その範疇に含まれそうです。

みな、一様に言えるのは
「頼まれもしないことを、ひっそりとやっている」人たちです。

こういう人たちがいる、
つまり「ドーナツ人材」がいる地域は、発展するスピードが早い。
それは、僕たちが、自分たちの地域や、そのほかのたくさんの地域をみてきたからこそわかったことなのです。

みなさんと「ドーナツ人材」を深掘りたい

いかがでしょうか、ドーナツ人材、興味がわいてきましたか?
もしかして、自分がそうかも?と思われた方もいるでしょう。

ドーナツ人材は、地域の陰にかくれていて、一見するとわからないことが多いです。やはり地域で目立つのはプレイヤーですから、でもその陰で、見えない資産をデザインしているドーナツ人材がいるからこそ、プレイヤーの活動がスケールするのです。

損な役回りにおもえるかもしれませんが、昔から、年長者の役割は、損な役だと相場が決まっています。

僕たちも、その存在に気付いたばかりの「ドーナツ人材」
LOCOでは、このドーナツ人材をもっと深掘りたいと思っています。
地域がよりよくなるために、コワーキングスペースの次はドーナツ人材なのでは?と考えています。
そもそもドーナツ人材って?をみんなで語り合うイベントや、各地域のドーナツ人材を集めたカンファレンスなどを企画し最終的には、スクールのようなものを企画できればと考えています。

まずは、今年、九州は福岡でドーナツ人材を深めるイベントを企画しています。詳細が決まり次第、こちらでも共有いたしますので、ご期待ください。

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