なぜ女性起業家はまず自分を大事にするべきなのか?

LBS Entrepreneur ClubとTBEClub(https://twitter.com/tbeclubhq)が共同開催するRenee Elliotのトークイベントに行ってきました。

ReneeはPlanet Organicというイギリスで初めてのオーガニックスーパーマーケットを1995年に立ち上げた女性起業家で、健康やオーガニック界隈では一番成功している女性の一人です。
http://www.planetorganic.com/

そんな彼女も、オーガニックがほとんど知られていない時代に新しい概念のスーパーを始めたので、立ち上げ当初はかなり苦労したようですが、運よく(?)BSE騒動と大腸菌騒動でオーガニック食品を気にする消費者が増え、1年目に1.2百万ポンド、2年目に2.4百万ポンドと、順調に売上を伸ばしていきました。しかし、そんな順調に事は運ばない。立ち上げ数年後に創業共同経営者と上手くいかなくなり、信頼していたパートナーと事業の経営権をかけて訴訟で争う事になります。

アメリカの片田舎からDCの大学に進学し、偶然恋に落ちた男性と過ごす為にロンドンに移住し、情熱と信念で全く知見の無い小売分野で事業を拡大してきた20代の彼女が初めてナイーブな自分と向かい合い、内省する時間をとった経験だったとのこと。
この期間は本当に辛かったけれど、多くのメンター、特にCraig Samsという事業家にはとても多くのアドバイスをもらったそうです。(https://en.wikipedia.org/wiki/Craig_Sams)

苦しい時を経て無事に訴訟を勝ち経営権を確保した彼女ですが、この経験から、共同経営者を選ぶ場合には「自分の直感(=この人は信頼できる人か?)に100%納得がいかなければパートナーは組まない」という信条を持ったようです。

目の前の事業の成功を真剣に考えていると、現場レベルでは会社のValueと齟齬が生まれる事がある。日々、矛盾や疑問の中で正しい落しどころを見つけるために苦しい道を歩み続ける事になるので、本当に信頼しあえる相手でなければ困難な難局を一緒に乗り越えられない。
20年くらい生きていると、だれしも直感的に①相手を尊敬出来るか、➁しっかりとコミュニケーション出来る相手か、➂信頼出来る相手か。というのは何となく理解出来る様になる。
なのに、聞こえの良いバックグラウンドの人間が居ると、直感的に違和感があってもいろんな理由でその人を正当化しようとしてしまう。自分の理性に押し切られず、直感に素直に従う勇気を持つことが大事。との言葉が印象的でした。

そんな彼女のトークですが、個人的に一番共感してしまったのは「自分を大事にしなさい」という話。特に女性のプロフェッショナルは、周囲の事を第一に考えがちだけど、周囲をケアをする前に先ず自分の事を一番大事にする事。そうでなければ、周囲を大事にする為の力が得られないから。
飛行機で緊急脱出するときに先ず自分の酸素マスクを付けるのと同じで、自分が瀕死の状態だと社員も家族もケアできない。日々自分をケアしてあげて、そのおかげで湧き出るパワーを使って大事な人を大事にしましょう。
酸いも甘いも経験し、女手一つで小売りチェーンを築き上げながら、旦那さんと良好な関係を維持して6歳、9歳、10歳、の子供を育てている母親。。。そんな方が言う言葉にはとても説得力がありました。

最後に質問タイムがあったので「そんなに情熱をもって打ち込んでいる仕事と、自分や家族を大切にするプライベート、どうやって両立させているのですか?今できていたとしても、20代の時に両立できていましたか?」という質問をしてみました。

答えは「20代の事業立ち上げ当初は仕事しかしてなかった。焦りながら競合に負けないように早朝から深夜まで働いた。お店で棚出しもしたし、モップがけも毎日やってた。でも、途中で気づいたの。もし私のビジネスが、数年で誰かに追いつかれるような短距離走しか走れないものだとしたら、結局追いつかれて終わる話。どれだけ新たな価値を生み出せたか、新たなことを実行出来たかでビジネスを評価した方がいい(Business is about execution and creating difference、Not a race)。パニックを起こしたりストレスで精神を苛むような働き方をしていたら、人生賭けて続けるマラソンを走り続ける事は出来ない。楽しく駆け抜けられなければ走り続ける事は出来ないから、意識して楽しいマラソンを走りなさい。」という物でした。

そりゃそうだよねー。と思いつつ、いざ大海原で荒波に揉まれまくってる時、どれだけこれを実践できるかなぁ。失敗経験を沢山積みながら、ようやく到達できる境地として自分も目指していきたいです。

最後に資金調達についてアドバイスがありました。Reneeは過去に苦労したこともあり、「可能であれば投資家の出資は受けない方がいい。なぜならば自分が事業のコントロールを失うし、投資家対応で多くの時間を無駄にすることになる。よく理解しあえていない投資家に頼むくらいであれば、取引先に期間限定で決済の条件を緩めてもらい、手元の資金を厚くする方が理にかなっている。それでももしどうしても投資家から出資を受けるならば、絶対に自分と、自分の信条を信じて任せてくれる人を選ぶべき。」というコメントを繰り返していました。実際、Renee本人が資金繰りに窮した際には、銀行に頭を下げたこともあれば、卸に行って決済条件を3か月緩めてもらったり、あらゆる手をつくして投資家に頼らず会社を延命させたそうです。
資金調達方法に関しては色々なやり方があるので、一概に投資家NO!というのが良いメッセージかはわかりませんが、Reneeの言葉は、本人の過去の苦労を想起させるとても説得力のあるものでした。

出資だけに限らず、「友人と共同創業してはダメ」、「親族からお金を借りてはダメ」等々、世の中知った風に色々言う人がいるけれど、一番大事なのは自分が納得感のある道を選ぶこと。とことん考えて悩んで、納得した道で頑張ってください!という、最後はとてもポジティブなメッセージで締めくくられました。

参加者みんなでパワーをもらったとても良いイベントでした!

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