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Incubus 「Make Yourself」/アルバム・レビュー

1991年結成、アメリカ・カリフォルニアのバンドIncubus。

デビュー当時はハードなミクスチャーバンドでしたが、自主制作の『Fungus Amongus』から数えて3作目である本作『Make yourself』は大きなターニングポイントになる作品でした。

一体どんなアルバムなのか、深堀りしていきたいと思います。


キャリアの転換点となった大ヒットアルバム


全米で300万枚以上売り上げた伝説的なアルバム。
1990年代半ばからラップとハードロック、ファンクを掛け合わせたミクスチャースタイルで、レッチリやフェイス・ノーモアなどと同じジャンルで認識され徐々に人気が高まっていましたが、本作を起点にオーガニックでナチュラルなロックに変化しました。

1st~2ndの時点でもラウドでヘヴィ、音圧高めな攻撃的なサウンドかつユニークな曲調で人気バンドのひとつでしたが、彼らの知名度を一層高めることになったこのアルバム。
ディストーションギターとソリッドなドラムの激しい音作りから一変し、メロディアスで耳なじみのいいアメリカンロックな作風へと変化した、キャリアの転換点となりました。

本作以降、次作の「Morning View」は一層ナチュラルで肩肘張らないサウンドになり、その後も常に変化し続ける懐の深いバンドへと進化していきました。

例えるなら、今まで科学調味料たっぷりで刺激的な味わいだったものが、素材本来の味で勝負し始め、いまでは人間らしくリラックスしていながらも、もともと持っていたユニークな作曲センスが個性的な良作に昇華しています。

演奏の魅力はやっぱり歌、ギター!と見せかけて、核になっているのはドラムの表現力


この頃から長いドレッドヘアをバッサリ切って、実はイケメンだったことをカミングアウトした、ヴォーカルのブランドン・ボイド。
人を惹きつける魅力的な声質で、存在感が凄い。間違いなくバンドの看板となっています。

また、発明家でもあるギターのマイク・アイジンガーのテクニックも際立っています。彼のユニークなフレージングは、ギターオタクからも支持を集めています。

さらに、バンドの魅力はDJキルモアのDJプレイにもあります。
当時はDJがバンドの一員として活躍するミクスチャーバンドが大流行していました。その中でもDJキルモアのスクラッチは、バンドの楽曲に独特の色を与え、その個性的な存在は欠かせないものと言えるでしょう。

一般的には上記3点がバンドの目立ったアピールポイントだいうのは否定できませんが、個人的にあげたいのはバンドの演奏の核になっているのはドラムの表現力だということ。

特別目立ってバカテクを披露しているわけでもないし、むしろ目立たないところでバンドを支えている印象かもしれなません。
それでも、よくよく聴いてみて感じたのはドラムの音色の心地よさと抜群のタイム感。欲しいところをしっかり埋めて、必要なところできっちりタメを作れる。
この表現力が絶妙なダイナミクスを生んで、このアルバムのオーガニックな魅力を引き立てていると思います。

どの曲のここがスゴイ!というよりも、実はずっといい演奏をしていて、ベースと抜群に絡みあって楽曲を支えている。リズム隊の安定感と心地よさこそが影の立役者だと断言できるでしょう。

なんといっても、奇跡の一曲「Drive」


見出しそのままですが、なんと言ってもこの曲の存在感だけで勝ち組。
ロック史に残る名曲といって過言ではないでしょう。
この曲が流れた瞬間に世界に引き込まれるような独特の空気感を纏った特別な一曲。この曲を聴くだけでもこのアルバムを聴く価値あり。

他にも、#The Warmthも独特のノスタルジックな世界観に惹き込まれる素晴らしい一曲。

#6 Stellarは当時アメリカのラジオでヘヴィーローテーションされていた人気曲です。

#12 Pardon Meは今までのミクスチャーロックの路線上。分かりやすくノリやすいラップ・ロックです。
ちなみにこの曲は「リトル・ニッキー」というB級アメリカ映画の劇中歌として使用されていました。ヘヴィメタルやニューメタルをふんだんにフィーチャーしたこの映画は私が個人的に一番好きな映画という事もありとても印象に残っています。腹の底から笑えるので、こちらもあわせておススメしたいですが、かなりおバカでお下品な作品なので視聴は自己判断にお任せします(笑)


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