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創作 そこにいること

待ちぼうけ

 ねえ、ねえってば。いい加減スマホ見るのやめなさいよ。そっちが会いたがったんじゃない。せっかく来たのに。こっち見なさいよ。
「ごめーん、お待たせー。何見てんの?」
「これさあ、今流行ってる怪談らしいんだけどさあ。これ読みながらここに立ってると幽霊出るらしいよ」
「え、ヤバくない?! どう、どう?! なんか出た?!」
「全然ー。ていうか、あたし霊感無いから。出てもわかんない」
 何よ……いつもいつも、みんなして。勝手に呼ぶくせに、誰も私に気付かないじゃない……


子守

 信号待ちをしていたら、向かいの歩行者用信号機の下に花束を見つけた。
(うわ、ヤなもん見たよ……)
 すると、向かいで信号待ちをしている男性の背後にすーっと黒い影が浮かび上がった。彼が胸に抱いている赤ん坊が、驚いたのか泣き止んだ。
(子どもは見えるっつーしな……大丈夫か)
 赤ん坊は……むしろ喜んでいるのかキャッキャと笑い声がする。よく見ると影がもにもに動くのに合わせて手足をバタつかせ、ご機嫌なようだ。
 信号が青に替わった。疲れた様子だった男性はハッと顔を上げて横断歩道を渡る。影は2人が渡りきるまで、もにもに両手を振っていた。俺は影とすれ違いながら、心の中で親指を立てた。
(ナイスアシスト)


ゆっくり来てはよ帰れ

「じいちゃん帰った?」
「今帰ってったよ。あと訊いてみた」
「なんて言ってた?」
「うちの牛と馬が逆なのは、ばあちゃんがツンデレだからだって」
「死んでもポジティブだなじいちゃん」


毎年恒例

「いたか?!」
「また見失った」
「どこ行きやがった生首め」
「あ、いたー!!」
「逃がすなー!」
「今年こそ大人しく供養されろやー!!」
「いい加減呪いから解放されろー!」
「やだぁ! だって成仏したらみんなもう会いに来てくれないでしょう?!」
「だから末代まで供養するって言ってるだろが!!」
「四代に渡っての恒例行事なんだぞこれ! いい加減信じろよ!」

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