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芸術学は知識を愛する学問である

ふとした[きっかけ]で、時折り読みたくなるのが【哲学】についての本です。

最初の[きっかけ]は30歳の頃。小説を読んでいて、
「文豪と呼ばれる人はみんな “自分は何のために生きているのか?” の答えを探しているんだ」と発見(?)し、私も…と哲学の入門書を手にしたことです。
子供でもわかる入門書なので、その時は「ふむふむ」と少しだけ分かったつもりになります。しかし、元来じっくり考え続けることが苦手なタチなので、最初の10ページほど読んで脳に疲労感を覚えて終わり。本棚にそっと片付けます。
一時的で表面的な理解なので内容はすっかり忘れています。数年後、何かの[きっかけ]で「そういえば…」と、また真っ新な気持ちで入門書の最初のページを開く始末💦。
【哲学】が役に立ったことがあるか?と聞かれたら答えは「ノー」。
一つだけ分かったのは、“哲学者=とことんまで突き詰めて考え抜く力を持つ、忍耐強い人” ということかな。

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本棚に野矢茂樹先生の本が確かあったはずなのに…と見つからなかったので、古本屋で見つけた副島善通先生の『芸術学の基礎』を読み始めました。授業研究会出版の、おそらくは大学の授業に使用されたテキストです。
今回の[きっかけ]は…。

美術鑑賞にどっぷりハマっている私ですが、制作という面からは全く関われないアートの世界。
これからの人生で、芸術とどのように関わっていけるのか?。
そもそも “芸術とは何か” を自分なりに探ってみたい!と思ったからです。

古本屋さんでこの本を選んだのは、『芸術学の基礎』という題名に惹かれたこと、そして まえがき にあった文章。

芸術とは何か…これを学ぼうと志す者は、この学問が哲学の薫陶を深く受けて「芸術学」の名称を受けていることを知る必要がある。
(中略)芸術学は哲学なのである。したがって私たちは哲学の思考方法を知り、その視点から芸術学を考えなければならない。

なるほど【哲学】ね。+ “薫陶を受ける” という慣用句、大好きです(笑)。
続いて本文をチラリと覗いてみると、素敵な文章を発見!

哲学philosophyとは、もともと「知識を愛する」学問の意味であり、philosophia 「知恵を愛する」の言葉に由来し、「世界や人生の究極の根本原理を客観的・理性的に追求する学問」と定義されている。

これは丸暗記したいフレーズ。よし、買おう!(笑)。

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本の構成は、第1部 【美学】、第2部 【芸術学】。
私にとっての本丸は、第2部の【芸術学】なのですが、まだやっと第1部が読み終わったところです。
なかなか難解なのですが、面白いです。
面白いのですが、やはり難解です(笑)。
それでも第1部を読み終えることができたのは、副島先生が
“哲学を解決する手がかりを映画が与えてくれる”
という切り口から、多くの映画作品を引用しているからでしょう。

たとえば、第3章 アイディアリズム(観念論)の「感覚と名称」について説明するにあたり、映画『奇跡の人(The Miracle Worker)』を引用しています。
見ることも聞くことも、そして話すことも出来ない三重の障害を抱えるヘレンケラーが、主人公のサリバン先生の教えにより手のひらに水をかけながら“W・A・T・E・R”と発音するクライマックスについて。

言葉がわかったということは、ものには名前があるということ、ものの名前が人にそのものを伝えることができるということ、さらに言えば、主観と客観が区別されたこの瞬間が “The Miracle” である。

ふむふむ。難解な説明でも、映画に当てはめると一気に理解できたようなつもりになるから不思議です。
その他にも、
「アイディアリズム」 ←『バニラ・スカイ』
「イデアの意義」 ←『ベルリン・天使の詩』
「帰納原理」 ←『ゼロ・グラビティ』『鳥』
「演繹法」 ←『風と共に去りぬ』『12人の怒れる男』
といった具合に映画を引用しています。
『ミクロの決死隊』『ビューティフル・マインド』『真夜中のカウボーイ』『チャップリンの殺人狂時代』も出てきます。全て私が印象に残っている映画ばかりではないですか!。
「そうなのね、そうなのね。そういう哲学的な意味合いを読み取ることもできるのね!」と興奮しながら読み進めて来ました。
そして、もう一度映画を見直したくなりました。

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さて、次は いよいよ第2部 【芸術学】です。
目次をみると、時間の誕生として「音楽」を、空間の生成として「絵画」について書かれているようです。後半のページにはダ・ヴィンチ『最後の晩餐』やヤン・ファン・エイクの『アルノルフィーニ夫妻の肖像』を見つけました。
うわーっ。早く「絵画」にたどり着きたい!
しかし少しずつ読み進めているため、まだまだ時間がかかりそうです。100ページ程の薄い冊子なのに…(涙)。

今度こそ最後まで読み切ります!
知識を愛する学問=芸術学を理解するためには、忍耐力が必要なのですから。

<終わり>

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