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文豪たちが触発されてきた西洋美術

毎朝、職場の最寄駅・エキナカにある本屋さんに10分ほど立ち寄ります。心惹かれる本は多いのですが なるべく買わないように、買わないように…。
最近、やりたいことが多くて読書の時間が取れず、一冊をしっかり読み切ることが減ったからです。反省。
パラパラ立ち読みして吟味した結果、どうしても読みたくなったら図書館などで借りてきたり、古本屋さんで安く買うことにしています。

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その本屋さんで即買いしてしまったのが 谷川渥氏の『文豪たちの西洋美術』(河出書房新社)。実は 夏目漱石と西洋絵画についてnoteに投稿してから、作家が西洋絵画について言及した小説を探し出して順番に読んでいこう!と目論んでいたところです。

◉まえがき(要約)
明治から昭和まで、夏目漱石から松本清張まで五十五人の近代の作家たちが作品の中で、西洋の美術作品にどのように言及しているのか。日本近代の文学的想像力にいかに西洋美術的なものが浸透しているかが見えてくるはずである。

◉もくじ(抜粋)
夏目漱石のミレー 
森鴎外のマネエ
谷崎潤一郎のビアヅレエ
芥川龍之介のゴオグ(ゴッホ)
島崎藤村のシャヴァンヌ
梶井基次郎のレンブラント
夢野久作のベクリン
高村光太郎のミケランジェロ
太宰治のモジリアニ
三島由紀夫のグイド・レーニ
川端康成のセザンヌ
吉行淳之介のクレー
安部公房のフラ・アンジェリコ
遠藤周作のピエロ・デッラ・フランチェスカ など

うわーーーっ。これはすぐ読みたい!もう買うしかないでしょ(笑)。
大切に胸に抱えてレジに並んだ後で、ちょっと値段が高い(税別2,000円)のに気付いてビビりました💦。

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帰宅してすぐに、文豪たちが文学作品の中で西洋美術について言及している引用部分だけを一気に見ていきました。60作品✌️。
谷川渥さんの解説はまだ読んでいません(すみません)💦。

むかし読んだはずの夏目漱石『草枕』、永井荷風『ふらんす物語』、梶井基次郎『檸檬』、芥川龍之介『或阿呆の一生』、太宰治『人間失格』、三島由紀夫『仮面の告白』、開高健『裸の王様』、遠藤周作『沈黙』…。西洋絵画についての記述があったことを覚えていません。そう言われれば…?と。情けない😭。
かろうじて覚えていたのは、夏目漱石『永日小品』で言及されたダ・ヴィンチの『モナリサ』のみ。主人公の奥さんが『モナリサ』を見て「この女は何をするか分からない人相だ。見ていると変な心持ちになる」という確信をついた感想を述べるところが、面白くて印象に残っていました。

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さっそく小説を入手して読んでみたくなったのが 安部公房氏『水中都市』。

ふとぼくは、フラ・アンジェリコの天使たちが工場で、それ自身が目に見える光輪のような歌をうたいながら旋盤を操作している場面を幻覚しました。幸福のあまりぼくは息苦しくなりました。

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フラ・アンジェリコの『受胎告知』の場面を幻覚できた高揚感を、“幸福のあまり息苦しくなる” と表現しているのがいいですね。

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中井英夫氏は、1964年来日していた『ミロのヴィーナス』を見て幻想的な物語を紡ぎ出しているそうです(『悪魔の骨牌』より)。

ビーナスは意外に小さかった。それは笑っていた。優しい微笑ではなく、不敵な笑みを浮かべていた。…そこに聳えているのは決して世にいう女性像ではなく、鋭い猛禽に似た何かだった。

私もルーヴル美術館で対面した女神を「美しさの中に厳しさを兼ね備えている」と感じました。

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私ごときは 文学作品の中に画家の名前、それも文豪たちが発音に近いカタカナで書いた画家の名前を見つけるだけでワクワクします。
詩人・大手拓次氏の詩集『藍色の蟇(ひきがえる)』は、是非読みたいです。収められている「日食する燕は明暗へ急ぐ」より。

ブレエクより、ビアヅレエより、モロオより、ロオトレエクより、ドオミエより、ベツクリンより、ゴヤより、クリンゲルより、ロツプスより、ホルバインより、ムンクより、カンペンドンクより、怪奇なる幻想のなまなまと血のしたたるクビンである。

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上)アルフレート・クービン『良き医者』
これは…。クービンの作品がもっと見たくなりました😆

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ワクワクが止まりません。

<終わり>

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