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METの実力、クラーナハの実力

先月訪れた<メトロポリタン美術館展>。【第一章 信仰とルネサンス】に展示されていた17作品の中で、私が特に注目した3人の画家について投稿しました。
ダーフィット、クリヴェッリそしてクリストゥス。
まだまだ投稿したい作品はあるのですが、ちょっとマニアックな世界に深入りしそうなので、noteへの投稿は控えておきます(笑)。
今回は【第一章】をざっくりおさらい。

作品リストを改めて眺めていくと、
【第一章 信仰とルネサンス】は、1420年代イタリアから始まります。
フラ・アンジェリコ、フィリッポ・リッピ、クリヴェッリ、ギルランダイオ、そしてラファエロ。
次は1450年代からのネーデルラント
クリストゥス、バウツ、デル・フース、そしてダーフィット。
そして1500年代に入りドイツのホルバインとクラーナハ。
ギリシャ出身のエル・グレコを挟んで再び1550年以降のイタリアへ。
ヴェロネーゼ、そしてティツィアーノ。
なんとも贅沢な布陣です。

今回は来日していないのですが、メトロポリタン美術館は他にも
ジョット、ボッティチェッリ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、
ヤン・ファン・エイク、ボス、ブリューゲル、
そしてデューラー …etc.
の作品も所蔵しているというのですから、ルネサンスを説明するに必要な作品を全て網羅しているのですね。これが THE MET の実力。まさに「美の百科事典!」素晴らしい✨。
こんな美術館が近くにあったら、毎日通います!
(写真はメトロポリタン美術館があるマンハッタンのセントラル・パーク)

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【第一章】で最後にどうしても触れておきたい作品を一つ。
ルカス・クラーナハ(父)『パリスの審判』(1528年頃)

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ギリシャ神話に由来する「パリスの審判」は、トロイアの王子パリス(画像の左下で座り込んでいる男性)が、3人の女神、ヘラ、アテナ、アフロディテ(=ヴィーナス)の中から “最も美しい者” を選ばされることになる物語。
パリスを騎士の姿で描く、背景に湖と街のあるドイツの山岳地帯の風景を描く、などなど、クラーナハが独自のアレンジを加えています。

妖しい裸体の三美神は、現代のファッション誌のモデルのようなポーズをとっています。彼女たちは、クラーナハが創り上げた世界の中だけに生きている ‘不思議な 生命体’(←と勝手に私が命名)、多くの作品に登場しています。
水晶を持った中央の男性(メルクリウス)の衣装が面白いですね。オレンジをあしらったデザインなのかしら?
運命に身を任せるしかないパリスは中央で座り込んでいます。鎧の間から出した真紅のビロード衣装が美しいです。
暗雲を背景に弓を引くキューピットの狙いは神話によるとヴィーナスかしら?
葉の一枚一枚まで緻密に描き上げるクラーナハは、いつもながらお見事。

個人的にまだ距離を置いているクラーナハなのですが、いつ、どの作品を観ても “安定のクラーナハ” であり、そういう意味でやはり唯一無二の偉大な存在なのだなぁ…と感心したのです。

図録によるとクラーナハはこの主題を好み、10作品以上描いているそうですよ。

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作品は左上から右回りに、
キンベル美術館(1512-14年)、シアトル美術館(1516-18年)、セントルイス美術館(1530年)、カールスルーエ州立美術館(1530年)、イギリス王室コレクション(1537-40年)、バーゼル市立美術館(1528年)、コペンハーゲン国立美術館(1527年)、ヨアネウム(1515年)。

ほら、あの妖しい ‘不思議な 生命体’ が全てに登場し、どこから見ても “安定のクラーナハ” でしょ?
この主題「パリスの審判」と、そしてなんと言ってもクラーナハ様は 当時から大人気だったのですね。まだその魅力が理解できていない、未熟者の私をお許しくださいませ。

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たっぷり楽しんだ<メトロポリタン美術館展>【第一章 信仰とルネサンス】。
この他に ティツィアーノ、エル・グレコにも触れたかったのですが、このままではこの部屋から抜け出せなくなりそうので、一旦切り上げます。

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左)ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『ヴィーナスとアドニアス』(1550年代)
右)エル・グレコ『羊飼いの礼拝』(1605-10年頃)

また機会があれば…。

<終わり>

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