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小さな自己主張・私のアリギエーリ

2月にスマートフォンの機種変更をしたとき、店頭で一緒に購入したスマホ・ケースに見覚えのある穴が空いていました。
あらっ、これはストラップ ホールかしら?

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携帯電話時代は、皆さん わんさとストラップを吊るして楽しんでいましたね。
ストラップはその人らしさを見つける格好のアイテムでした。

電車に座っていた私の前で、肩幅ほどに足を踏ん張って立ちはだかるパンプス。キリリとスーツ姿の大人女子の手元にディズニーキャラクターを見つけると、何だかほんわかした気持ちになったものです。
久し振りに、あの小さな自己主張をぶら下げたくなりました。

新しいスマホ・ケースはレザー調のシンプル・ブラックなので、ストラップは鮮やかな差し色を入れようかなぁ。いやいや、何気なく目立たない感じでいながら キラリ✨と光る小粋な一品にしたい。などと探していたのですが、なかなか店頭でストラップを見つけることができず…そのまま二ヶ月経過。
先日、やっと見つけました!私の相棒を。

じゃーーーーん。『考える人』ストラップ。

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本皮とシルバーからなるシンプルなデザイン。
ブロンズ像を思わせる黒光り✨のするシルバー部分は、ロダンのサインと、そして小さくなっても やはり ‘物思いに耽る’『考える人』がいます。
小さな美術品グッズは、ともすれば “ちゃっちい偽物” となりがちですが、このお人は違いますぞ。程よい重さがあるため、テーブルに置いたときの音は “カラン” ではなく “ゴトり”。背中、腕や足の筋肉はまさに地獄の門を見下ろす、あのお方です。
本革の部分は黒、赤、茶色から選べたのですが、ここはクールに攻めましょう!と黒をチョイス。とても気に入っています。

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購入したのは、国立西洋美術館のオンライン・ショップ!
美術館は改装工事のため現在休館となっていますが、ショップは今年の3月にオープンして稼働中です。

去年、美術館に行ったときに購入して以来 愛用しているのが、コルビュジエの布トートバッグ(1,250円)。しっかりした生地に使いやすいサイズ、内ポケットが付いているのもお気に入りです。シンプルでカッコいいノート(390円)もお勧めです。
今回は、革ストラップ(黒・890円)を2つ購入して、旦那さんとお揃いで使うことにしました。

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改めてオンライン・ショップの商品を見ていたら、考える人のキーホルダー(550円)もありました!素敵です✨。マグカップもいいですね。

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さて。
私の手元で ‘物思いに耽っている’ このお人をなんと呼びしましょうか。
と、何にでも名前をつける私は考えます。頬づえをついた右肘を左膝の上に乗せて(笑)。

本家 彫刻の作品名は、一般的に『考える人』(The Thinker) ですが、もともと『詩人』(The Poet) とされていたそうです。
詩人ですか。詩人といえば、少し体が弱くて家にこもりがち、普通の人より感受性が鋭く、そのぶん心やさしい人物…と古い日本人である私は考えがち💦。
筋肉隆々の裸体で、堂々と ‘物思いに耽る’ この力強いお人とはかけ離れているような気がします。
しかし、ダンテやボードレールそしてロダン…と、西洋の人がイメージする詩人は、激しく熱量の高い人物像なのかも知れませんね。
よしっ、私も堂々とした力強い人間になるぞ!と訳のわからない決意を口に出したところで、命名作業に戻りましょう。

遡(さかのぼ)りの連想ゲームです。
ロダンの彫刻『考える人』
←『地獄の門』彫刻の一部である
←『地獄の門』はロダンが叙事詩『神曲』を元に制作した
←ダンテ。イタリアの最大の詩人であり、ルネサンス文化の先駆者と呼ばれ『神曲』の作者。

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『ダンテ・アリギエーリ』サンドロ・ボッティチェッリ(1495年)

ダンテのことも イタリア文学の最高峰『神曲』のこともほとんど知らないのですが、2021年はダンテ没後700年のメモリアルイヤーで、イタリア各地で数多くのイベントが開催されているそうです。

よしっ!私の相棒の名前は かのダンテ・アリギエーリにあやかって

アリギエーリ”(Alighieri)

としましょう。
発音しずらくて、他の人が気安く呼んだりできないところが決め手です。

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さて現在 改装工事のため休館となっている国立西洋美術館。開館は2022年春を予定しているそうです。
美術館が出版している機関紙『ZEPHYROS 83号』によると、
前庭の下に位置する企画展建物部分の防水工事をしているそうです。
また、2016年ユネスコの世界文化遺産に登録される時の世界遺産決議で、前庭の景観が当初に比べ「顕著な普遍的価値が減じている」と指摘を受けたとか。
原因は暑熱対策と緑化計画に伴って配置した多くの植栽らしいです。
確かに、JR上野駅・公園口を降りて美術館の前を通ってみると、かろうじて『地獄の門』は見えるものの、『カレーの市民』『考える人』は植栽に隠れてよく見えない状態です。

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四季折々に咲く花や緑豊かな前庭が見られなくなるのは残念ですが、新しい美術館の景観がどのようになるのか…。楽しみですね。
1年後、晴れやかな気持ちで美術館を訪れることができますように。

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おまけ。
革ストラップをお揃いで使用している旦那さんに聞くと、名前をつける予定はないそうです。もったいない(涙)。

<終わり>

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