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美術展

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美術展に行った感想、気になった作品や作家について書いています。
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#国立西洋美術館

わたしと <キュビスム展>

2023年10月に<キュビスム展>(国立西洋美術館)を鑑賞。とても刺激を受けたので 「自分の言葉でしっかり記事にしたい!」 と意気込んで熟考を重ねておりました。 が、気がつけば2024年1月29日、なんと<東京展>は昨日で終わってしまいました。大変! 3月、京都市京セラ美術館に会場を移して開催されるということで <京都展>に間に合うように慌てて投稿しております。 今回はわたし独自の鑑賞法と、特にお気に入りのパートに絞って投稿したいと思います。 ********** 国立西

アカデミックな絵画と 2023年

国立西洋美術館の常設展の中に、普段は版画や素描を展示している 少し暗い小部屋があります。そこに展示された “正統派” 画家・7人の24作品を展示した小企画展 <もうひとつの19世紀> 。 とても面白くて、大いに刺激を受けてきました。 +++++ 副題は「ブーグロー、ミレイと “アカデミーの画家たち”」。 この “アカデミーの画家たち(the Academic Painters)” とは、 正統的で堅実な教育を受け、伝統的・格式的な作品を描く画家たちのこと。 19世紀フラ

<悪ものたち> と 【版画】 の魅力

国立西洋美術館・常設展の一室で開催されている小企画展、 <美術館の悪ものたち展> を観てきました。 数十点の【版画】作品と数点の絵画が並んでいます。 【版画】って、 ① 色を乗せていない作品が多いから、画面のどこに注目していいのか分かりにくいんですよ! ② 丁寧に説明してくれないと、何を描いた題材なのか分からないんですよ! という私の声を聞いてくれたのでしょうか⁈(そんな訳はないのですが)。 ① 作品に潜む「悪もの」に注目してください! ② おなじみの題材をいくつか並べて

【挿絵】の世界へようこそ!

来月 7月4日(火)から国立西洋美術館で開催される <スペインのイメージ展 〜版画を通じて写し伝わるすがた〜>。 【版画】の良さはよくわからない!と公言している私は「うーーーん、版画かぁ・・・」と思っていたのですが、楽しみにしていることがあります。 それはスペインが誇る騎士道小説『ドン・キホーテ』(ミゲル・デ・セルバンテス著)の【挿絵】作品群です。 ++++++++++ 2022年10月に訪れた<日本の中のマネ展>で、あのマネが【挿絵】を描いていたことを知りました。 帰

三つの<ブルターニュ> Partie 2

同じ日に鑑賞した二つのブルターニュ展、 [A]SOMPO美術館<ブルターニュの光と風>(以下、<SOMPOブルターニュ展>と表記)と [B]国立西洋美術館<憧憬の地 ブルターニュ>(以下、<西美ブルターニュ展>と表記) について前回投稿しました。 異なった文脈から同じテーマを鑑賞することで、考えさせられることも多かったのです。 午前中に訪れた<SOMPOブルターニュ展>の会場で、解説パネルに見つけたフレーズ、 「“ステレオタイプのブルターニュ人” を画家たちは描いた」。 こ

三つの <ブルターニュ> Partie 1

二つのブルターニュ展に行ってきました! 午前中…[A]SOMPO美術館 <ブルターニュの光と風>展 (以下、<SOMPO ブルターニュ展>と省略) 午後…[B]国立西洋美術館 <憧憬の地 ブルターニュ>展 (以下、<西美 ブルターニュ展>と省略) フランス北西部、大西洋に突き出た半島を中心とするブルターニュ地方。そこに旅行・滞在し、または移り住んだ画家たちと、ブルターニュ地方を描いた作品群を取り上げた二つの展示会です。 聞くところによると、二つの美術館は申し合わせをしたわ

“二つの顔” を楽しむ<ピカソ展>

国立西洋美術館で開催中の<ピカソとその時代展>。 ベルクグリューン氏のコレクションに大興奮し、その見どころを「余すことなく」記事にしよう!と、10日前から投稿準備を始めていたのですが…。私には無理でした(涙)。 なので、「掻い摘んで」ザックリと投稿します。 私が勝手に決めた 今回の鑑賞テーマは、 “二つの顔” です。 ******************** 【序章〜ベルクグリューンと芸術家たち〜】 来日した97作品をコレクションしていたハインツ・ベルクグリューン氏は

ピカソの[作品リスト] と [列車時刻表]

“20世紀絵画について知りたい!” スイッチを押してもらった私が楽しみにしていた <ピカソとその時代 展>(国立西洋美術館)。 いよいよ始まりました。 会期の前半に絶対に行こう!と思っているのですが、いつ行けるかはまだ未定。 しかし今は「インターネットとその時代」。公式HPからいろいろな情報を入手することができるのです。 [開催概要]や[見どころ]を読んでワクワク。 ベルクグリューン美術館から来日している97点のうち、76点が日本初公開なのですね。 公開されている作品画像

画家の見た景色と鑑賞者の観る景色<B面>

(冒頭の写真は、左からセザンヌ、ドラン、モンドリアン、クレー) <自然と人のダイアローグ展>第3章〜光の建築〜を、 前回とは違う角度から <B面>として投稿しよう! …と8月、31日間ずっとnoteの下書き画面と向き合っていました。 きっかけは、6月18日(土)に国立西洋美術館の田中館長の講演会「20世紀美術における自然」〜セザンヌとセザニスムから〜を視聴したとき、 今までその存在すら疑っていた 私の体の中にある、 “20世紀絵画を「知りたい!」スイッチ” を押してもらっ

画家の見た景色と鑑賞者の観る景色<A面>

<自然と人のダイアローグ展>第3章は〜「光の建築」The Architecture of Light〜。 第1章、第2章とは全く違う世界が広がっていました。 (冒頭の写真は左から セザンヌ、ホドラー、シニャック) 常設展で何度も観てきたセザンヌ(画像・左)からスタートです!。 島展示というのでしょうか、展示室内の空間を遮るようにポツンと置かれた黄色い壁に 来日したもう一つのセザンヌ(画像・右)。視線を不規則に移動させることによって鑑賞する側もリズムを感じることができます。

第2章 未知の風景を探求すべし!

<自然と人のダイアローグ展> 第2章のテーマは「彼方への旅」。 いつも、展示会場に設置された “見どころ” パネルはあまり読み込まないようにしています。今回も 斜め読みして自分流にざっと把握。 「第2章では、画家の心象や観念に結びついた自然風景を求めて、現在・過去・未来、そして現実・空想・物語の中へ旅をしてみましょう!」 ふむふむ。 私がまだよく知らない画家たちの作品も楽しみたいと思います。 (冒頭の画像は、左からフリードリヒ、ドレ、ベックリーン、モロー) ********

第1章 コローがつなぐ自然と時間

《自然と人のダイアローグ展》は、まだスタートの12作品しか投稿できていません。今回の投稿で第1章を終わらせたいと思っています。 (写真は、左からコロー、ルノワール、モネ、リヒター) ******************** 第1章の展示会場は、モネからカミーユ・コローへと続いていました。 コローの風景画をみると、いつも不思議な気持ちになります。足元がふわふわして幻想の世界に引き込まれるような感覚というのでしょうか。 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー(1796-187

第1章 ブーダンからモネへ 流れる時間

作品の細部にとらわれ過ぎず、 カンヴァスに「描かれている自然を全身で感じる」こと 「画家と自然の対話を感じ取る」こと それを通じて私自身が「自然と向き合う」こと を目標にして臨んだ 《自然と人のダイアローグ展》。 美術展は、19世紀・風景画家ブーダンの描いた海辺で幕を開けました。 私がはじめてウジェーヌ・ブーダンを知ったのは埼玉県立近代美術館の常設展。 まだ十代のクロード・モネに戸外で制作をすることを勧めた師匠として、ブーダン『ノルマンディーの風景』、モネ『ルエルの眺め』

二人のアンリ・<シダネルとマルタン展>

以前から違いがよくわからず 区別がつかなかった二人の画家。 アンリ・ル・シダネル(1862-1939年) アンリ・マルタン(1860-1943年)。 私がこれまでに観た作品はごくわずかなのですが、二人の画家に対して同じような印象を持っていました。 最初に観たのは、国立西洋美術館 所蔵・マルタンの作品。 常設展示室では、新印象派シニャックの隣に並んでいました。マルタンは【新印象主義】の[点描技法]を用いた作品を描いているのですね。マルタンがカンヴァスに乗せた点描は、シニャッ