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『パラサイト』のポン・ジュノ監督が会場を一瞬で魅了したスピーチ。

本日ロサンゼルスでアカデミー賞が発表され、韓国のポン・ジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞しました。

特に「作品賞」「監督賞」はアカデミー賞で最もビッグなプライズ、英語以外の映画が「作品賞」を受賞するのはアカデミー賞が始まって以来の出来事。

この歴史的瞬間に会場が湧きました。

日本でツイッターやNYタイムズのライブチャットを見ながら追っていた私も発表された瞬間は全身に鳥肌が立ち、涙が込み上げました。

この受賞がアジアの映画界だけでなく、アジアのバックグラウンドを持つ人にどれほど意味のあるものかはまた(少し落ち着いたら)書くとして、今日は監督の受賞スピーチが「最高!」とアメリカで話題になったのでシェアしたいと思います。

何度も会場をどっと笑わせるカリスマチックな監督に、誰もが魅了されました。

ポン・ジュノ監督は韓国語で話し、今シーズンずっと通訳をつとめ大変評価されている方が舞台上で通訳を行っています。

映像はこちら:

* * *

ポン・ジュノ監督のスピーチ:

Thank you. After winning best international feature, I thought I was done for the day and was ready to relax.

ありがとうございます。国際長編映画賞を受賞した後、もう今夜は終わり、リラックスできると安心していました。(会場笑う)

Thank you so much. When I was young and studying cinema, there was a saying that I carved deep into my heart, which is that "The most personal is the most creative."

ありがとうございます。まだ若くて映画の勉強をしていた頃、ある方の言葉を胸に深く刻んでいました。「最もパーソナルなことが最もクリエイティブ」。

That quote is from our great Martin Scorsese. When I was in school, I studied Martin Scorsese's films. Just to be nominated was a huge honor. I never thought I would win.

映画の巨匠、マーティン・スコセッシ監督の言葉です。(会場のスコセッシへ視線を向け、スタンディングオベーションが起きる。スコセッシはポン・ジュノ監督に何度もありがとうと合図する)私が学生だった頃、マーティン・スコセッシ監督の作品を研究しました。今日は(スコセッシと共に)ノミネートされただけでも誇りに思います。勝つなどとは想像もしていませんでした。

When people in the U.S. were not familiar with my films, Quentin [Tarantino] always put my films on his list. He's here, thank you so much. Quentin, I love you.

そして私の映画がアメリカで全く知られていなかった頃、クエンティン・タランティーノ監督がいつも「好きな映画」として紹介してくださった。今日もあちらにいらっしゃいます。クエンティン、大好きです。(客席のクエンティン・タランティーノと笑顔で挨拶を交わす)

And Todd [Phillips] and Sam [Mendes], great directors that I admire. If the Academy allows, I would like to get a Texas chainsaw, split the award into five and share it with all of you.

(同様にノミネートされた)トッド・フィリップス監督とサム・メンデス監督、大変尊敬する素晴らしい監督のおふたりです。もしアカデミーが許してくれるのであれば、テキサスチェーンソーを借りてこの賞を5つに切り裂きみなさんとシェアしたいです。

Thank you. I will drink until next morning, thank you.

ありがとうございます。明日の朝まで飲みます。(会場笑う)ありがとうございます。

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ノミネート監督全員にスポットライトを当て、深い感謝を述べ、思いきり笑いをとり、最後は「I will drink until next morning」と英語で一言。わざとなのか、英語を少し間違えているところも最高、かっこいい。その瞬間、会場が監督に惚れ込んだことが伝わってきます。

アメリカで人を魅了する方法というのは、そう、完璧な英語を話すことではなく、誰もが圧倒するようなパフォーマンスを披露した後に、謙虚な姿勢をキープしながら、ユーモアを存分にプレゼントし、最後は「韓国人の自分」らしくマークを残す。

もうなんというか満点すぎるスピーチでした。

本当におめでとうございます。

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