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【SNS法務】スクリーンショットに関する著作物性判断(東京地裁令和3年12発20日判決)

仕事始めです。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年の判決になりますが、年末年始がバタついてしまったので、今になってのこの判決を取り上げます。

ニュースにもなっていましたが、自身の投稿をスクリーンショットとして画像化し、それを投稿したことについて「著作権侵害」を主張したというものになります。

結論としては、権利侵害を認めた判決になりますが、①著作物性の有無、②引用(著作権法32条1項)として違法性阻却がされるか、が大きくポイントとなりました。

1 ツイートの著作物性

まず、著作権侵害の前提として、原告側に著作権があること、被告が著作権侵害をしているということが必要になります。明らかに著作物と言えるようなケースもありますが、本件では140字という比較的短文とも思えるTwitterのつぶやき(ツイート)が著作物と言えるのかということから争いになりました。

「こないだ発信者情報開示した維新信者8人のログインIPとタイムスタンプが開示された NTTドコモ 2人 KDDI 3人 ソフトバンク 2人 楽天モバイル 1人 こんな内訳だった。KDDIが3人で多数派なのがありがたい。ソフトバンクが2人いるのがウザい しかし楽天モバイルは初めてだな。どんな対応するか?」(原告投稿1)

これについて、裁判所は、原告投稿1は,140文字以内という文字数制限の中,発信者情報の仮の開示を求める仮処分手続を経て,著作権侵害と思われる通信に係る経由プロバイダが明らかになった事実に基づき,当該事実についての感想を口語的な言葉で端的に表現するものであって,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
⇒言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。

「@B @C@D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう 「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く同じ」だって言ってるんだよ。 結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃねーか。お前も含めてな。」(原告投稿2)

原告投稿2は,140文字以内という文字数制限の中,意見が合わない他のユーザーに対して,短い文の連続によりその意見を明確に修正した上,高圧的な表現で同人を罵倒するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
⇒言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。

「去年の今頃,「@E 」とかいう高校3年生の維新信者に絡まれて勝手にブロックされて「何したいんだ,このガキ?」って事が さっき,あのガキのツイートが目に入ったんだけど受験に失敗して浪人するわ都構想は否決されるわで散々な1年だった様だ 「ざまあ」以外の感想が浮かばない(笑)」(原告投稿3)

140文字以内という文字数制限の中,かつてツイッター上で特定のユーザーとトラブルとなった経緯のほか,その後,当該ユーザーの政治的主張が採用されなかったこと,当該ユーザーが大学入試に失敗したことを端的に紹介した上で,当該ユーザーが不幸に見舞われたことを「ざまあ」の三文字で嘲笑するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。

「@C アナタって僕にもう訴訟を起こされてアウトなのに全く危機感無くて心の底からバカだと思いますけど,全く心配はしません。アナタの自業自得ですから。」

140文字という文字数制限の中,原告に訴訟を提起されたにもかかわらず危機感がないと思われる特定のユーザーの状況等につき,「アナタ」,「アウト」,「バカ」,「自業自得」という簡潔な表現をリズム良く使用して嘲笑するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。

裁判所の判断は、原告の工夫・表現内容に個性が表れているとして、著作物に該当すると判断するものです。

著作物性については、「創作的に表現」するというハードルがあるわけですが、この辺はあっさりと個性が表れているというところで裁判所も認定をしています。

(被告もこのあたりについては「疑義がある」というくらいであまり大々的に争った形ではないようです)

2 引用の適否

著作物性が認められるとした場合、著作権者の許可なく著作物を使用する場合には、著作権侵害が成立してきます。ただ、例外的に著作権侵害を否定されるのが、引用などに代表される著作権の制限規定(著作権法30条以下参照)になります。

特に引用(著作権法32条)は、条文の解釈についても判断が分かれていたりもしますので、今回の判決はその辺が興味深いところです。

本件各投稿は,いずれも原告各投稿のスクリーンショットを画像として添付しているところ,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうすると,本件各投稿は,上記規約の規定にかかわらず,上記手順を使用することなく,スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため,本件各投稿は,上記規約に違反するものと認めるのが相当であり,本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが,公正な慣行に合致するものと認めることはできない。
また,前記認定事実によれば,本件各投稿と,これに占める原告各投稿のスクリーンショット画像を比較すると,スクリーンショット画像が量的にも質的にも,明らかに主たる部分を構成するといえるから,これを引用することが,引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない。

引用については、条文上、①公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。とありますので、その要件に該当するかが争われます。

この部分も大々的な反論はなかったのかもしれませんが、スクリーンショットでの複製というところがTwitterの規約に反するという認定から公正な慣行に該当しないという判断がされています。

スクリーンショットというものによる著作物の利用がどう判断されるかは、実際に投稿した投稿主との裁判において、さらに詰められる可能性があるとは思います。

ただ、個人的な話としては、スクリーンショット=違法というのは即断にすぎるかなというところです。

3 最後に

こちらは発信者情報開示請求事件ですので、元々のツイート主とNTTドコモ(スクリーンショットの投稿主はドコモを利用して、Twitterに投稿したと考えられる)になります。

なので、投稿主の主張としてはまた別の主張が出てくる(特に引用などについては投稿主の主張が別途出るものと考えられます)でしょう。

その辺がなされるかは何とも言えないところですが、SNS界隈の裁判例は2022年も引き続き出されていくことになると思いますし、この辺りは今後も注視していきたいところです。

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