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冷凍食品の新たな即食ニーズを掘り起こしたい。「冷凍おにぎり」を売ってみて初めてわかったこと。 

ニュースで見たよ!という方もいらっしゃるかもしれませんが、8月から東京都と福島県のローソン21店舗で「冷凍おにぎり」の実験販売をしています。

背景として、物流の2024年問題である人出不足を受け、ローソンでは弁当やおにぎりなどの商品の配送を1日3回から2回に減らし、物流効率化やCO2排出量削減への対応を進めていますが、さらにできることにチャレンジしています。冷凍おにぎりであれば賞味期限が長くなり、将来的に配送回数を1回にすることもできるかもしれません。また、品切れを防ぐことができ、食品ロス削減にもつながります。

今回は、8月末に冷凍おにぎりを発売してから約1か月経ち、販売してみて、わかったこと、気づいたことを担当の高松さん、森井さんに聞いてみました。

左:株式会社ローソン 商品本部 エリアMD統括部 アシスタントマネジャー 高松 純 
右:株式会社ローソン 商品本部 エリアMD統括部 森井 建

実験販売したことで届いたお客様の声

───冷凍おにぎりの販売はいかがですか?

テレビなどで紹介されたこともあり、発売した週は想定していた販売数の10倍近くも売れてしまって…。

───10倍もですか!?それはうれしい悲鳴ですね!

いや、まあ、ありがたい数字ではあるのですが…。ちょっと想定以上でして。
安定供給に努めてはおりますが、お客様にはご迷惑をおかけしております…。

───たくさんの方にご購入頂いていることは、ありがたい限りですね。
現在6品のおにぎりを販売していますが、実験販売を通じて何か気づいたことはありましたか?

それがですね、ビックリしているんですよ!
大きくは2つ。
まず、一番売れているおにぎりが想定外でした。

東京都・福島県の21店舗で販売している冷凍おにぎり

実験前は、あたためて食べる事と親和性が高い「五目おこわ」や「赤飯おこわ」が売れると思っていました。また、今回販売している6品で、常温おにぎりで売れているのは「わかめごはん」なんですね。
 
でも、「冷凍おにぎり」で今一番売れているのは…鶏五目なんです。
ちなみに、常温おにぎりの売れ筋上位の「わかめごはん」が、冷凍おにぎりでは最下位です。笑

───いやー、コレは実験し甲斐がありますね。

そうですね。
例えば、鶏五目には海苔が巻いてあるんですね。
実験前は海苔がついている冷凍おにぎりなんて、あまり受け入れてもらえないのではないかと思っていたのですが、一番売れていて。
 
冷凍おにぎりは、必ずレンジアップする、という行動が、いつものおにぎりと大きく違うところですね。
直巻おにぎりは海苔のしっとりした感じが好きな方とそうでない方がわかれるのですが、冷凍おにぎりはレンジアップすることで海苔の風味がたち、また違う味わいになるんです。

───もう一つは何でしょうか。

もうひとつは、「自然解凍をして食べられないのか?」という声を複数頂いている事です。
意外や、そのニーズが高いのか、と。

───自然解凍ですか。たしかに、冷凍食品のお弁当のおかずで、ポンと入れておけばお昼に食べ頃、なんていうのはよくありますよね。

はい、あくまで仮説ですが、冷凍おにぎりには、常温のおにぎりとは違うニーズがあると思っています。例えば夏休みのお子さんのお昼用に、おかずは作っておいて、プラスこの冷凍おにぎりを食べてもらう、といったシーンも想定されます。冷凍おにぎりが保冷剤の代わりにもなりますし、自然解凍できればお子さんにとっても楽だし、ちょうど良い時間に食べ頃になる。

───なるほど、たしかにちょうどいいですね。

はい、でも冷凍食品売り場をよく見て頂けると分かるかと思うのですが、自然解凍できる冷凍食品は、大半が「おかず」なんですよね。

───あ、そういえば「おかず」が多いですね。ごはんは見かけないような…。

よく冷凍庫でごはんがポロポロになってしまった、なんてことがあるかと思います。
ご飯はでんぷん質が高く、おにぎりを自然解凍でおいしくというのは、なかなか至難の技なんですよ…。
 
もちろん、いま販売している冷凍おにぎりも自然解凍には対応していません。でも、自然解凍したいというお客様の声があるのは確かなので、何とか実現したいと思っていて。
ココではあまり言えないのですが既に実現に向けて様々な方法を検討していますよ!

コンビニおにぎりの常識を変えたい。「実験屋さん」として社内にプレゼン。


───そもそも、なぜ冷凍おにぎりに取り組もうと思ったのでしょうか。

22年11月にオープンしたグリーンローソンで冷凍弁当の実験販売をしていたのですが、
レンジで温める時間も長く、コンビニのお弁当として求められる即食ニーズに対応できていませんでした。どちらかというとご自宅のストック用に購入されるシーンが多くて。
 
コンビニのおにぎりは朝食やランチなど、購入してすぐに食べるシーンがほとんどですよね。今回、新しい食のスタイルとして「冷凍おにぎり」を“温めて食べる”という即食の冷凍食品にチャレンジしたいと、この実験を行うことになりました。

───商品開発において工夫した点は何かありますか。

まずは、レンジアップする時間です。
お昼に食べていただくことを想定し、おにぎりとの買い合わせも多いカップラーメンを作る3分間を超えないようにしたいと考えました。 
実際のレンジアップの時間は店舗にある業務用レンジ(1500W)で35秒~45秒、ご自宅にある一般的なレンジ(500W)で1分40秒~2分10秒です。
 
もう一つは、温めた後に持ちやすいようにパッケージに余白を持たせたことです。

レンジアップ後でも持ちやすく工夫したパッケージ

通常のおにぎりのパッケージだと、温めたおにぎりを直で持たなければならず、熱くて持つことができないことがわかり、そのように改善しました。

───実験を始めるにあたって苦労もあったとか。

はい。これは社内的な話になってしまうのですが、スイーツやお弁当、おにぎりなどは決められた専用の売場があるのですが、私たちのチームは自分たちの売場を持っていないんです。全く新しいカテゴリーの商品なので仕方ないのですが・・・
 
「皆さんの大切な売場を貸してください!」とお願いをして、納得いただかなければ実験ができないので、売場を借りるためのプレゼンは重要なんです。
ですので、社内で私たちは「実験屋さん」と言われています(笑)。
今回の冷凍おにぎりは、冷凍売場の一部を使うので、冷凍食品の担当者にお願いをして実現しました。 

───なるほど。それは売れないと困りますね! まだ実験を始めたばかりですが、最後に、お二人の今後の目標を教えてください。

まずは実験店舗を広げ、おにぎりを”温めて食べる”というスタイルを提案していきたいです!
将来的にはおにぎりの売場に、常温のおにぎりと冷凍のおにぎりが一緒に並んで共存することができたら、お客様の選択肢の幅も広がるのではないかと。
 
さらには、おにぎりだけではなく、新しいカテゴリーでもチャレンジしていきたいです。

───高松さん、森井さん、ありがとうございました!


<編集後記>

50年近く当たり前のようにおにぎりを販売してきたコンビニですが、冷凍おにぎりは物流、食品ロス、
選べる種類の幅が増えるなど、新たな一石を投じようとしています。
 
ローソンは2025年に50周年を迎えます。
この50年でコーヒーやスイーツなどコンビニの商品の歴史を変えてきました。
日本のバスケが48年の歴史を塗り替えたように、
冷凍おにぎりもまた コンビニのおにぎりの歴史を変えるかもしれません。
 
今までの当たり前を当たり前にしない。
ローソングループは、お客さまの声に耳を傾け、新しい将来の常識を作るために、チャレンジしていきます!
 
冷凍おにぎり、次の一手もぜひ楽しみにしていてくださいね。

お店に掲出してあるPOPも、お二人が手書きしたものから 作ったのだそう。
商品への愛情、感じました!