差し押さえるべき財産はどうやって調べる?~財産開示手続の申立て~
債務者の預金や給料債権などの財産を差し押さえることで、毎月支払われるべき養育費や、返済期日の到来した貸付金などを強制的に支払わせることができます。
これが「強制執行」です。
しかし、強制執行をするためには、債務者の財産を具体的に特定することが必要不可欠です。
例えば、銀行預金を差し押さえるためには、〇〇銀行△△支店の口座番号□□□□の口座、といった債務者が保有している預金口座の情報が必要になります
給料債権を差し押さえるためには、債務者の勤務先会社名や所在地の特定が必要になります。
債務者がどのような財産を持っているのかよく分からないけれど、漠然と財産を差し押さえたい…。といったことは制度上できないのです。
では、どのようにして差し押さえの対象となる財産の情報を調べればよいのでしょうか。今回は、そのための最初の調査手続となる、「財産開示手続」について、弁護士が解説いたします。
1 財産開示手続とは
(1)財産開示手続はどんな手続?
財産開示手続とは、債務者を直接裁判所に呼び出し、自身の所有する財産(預金や不動産、株式等の金融資産、勤務先)に関する情報を法廷で陳述(報告)させるという手続です。
債務者の財産の内容を一番よく知っているのは、債務者その人に外なりません。つまり、債務者の所有する財産が分からないのなら、債務者を直接裁判所に呼び出して、自分から財産の内容を報告させればよい、という訳です。
また、財産開示手続においては、裁判所や、裁判所の許可を得た債権者が、債務者に対して質問をすることも認められています。これによって、債務者が自分から話したくないような情報についても、漏らさずに追及することが可能になります。
(2)債務者は呼び出しに応じるのか?
気になるのは、呼び出したからといって、債務者が素直に裁判所に出頭するのか、という点です。
実は、この部分は長い間、財産開示手続のネックとされていました。財産開示手続という制度自体は昔から存在するものですが、債務者が裁判所に出頭しなかった場合に課せられる罰則が軽微であったことから、呼び出しを受けた債務者が出頭せず、債権者が情報の提供を満足に受けられないということが頻繁に生じていたのです。
そのような中、令和2年に行われた民事執行法の改正で以下の仕組みが実現しました。
債務者が、裁判所の呼び出しに応じなかった場合や、呼び出しに応じたとしても、自己の所有する財産について、正当な理由なく陳述を拒否したり、虚偽の陳述をした場合には、6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金という刑事罰を負うとの刑事罰が定められました。
これにより、財産開示手続は、債務者が呼出を無視することが難しい強力な制度になったのです。
日本弁護士連合会による調査結果では、財産開示手続における債務者の出頭率は50%以上とされています。
また、東京地方裁判所では、財産開示手続の改正後、申立件数や出頭率が大幅に増加しています。
財産開示手続の実効性が確保されつつあると考えられます。
(3)それでも債務者が出頭しない場合には?
しかし、中には罰則を気にしない債務者もいないわけではありません。
債務者が出頭しない場合には、残念ながら、財産開示手続上で債務者の財産を特定することはできませんが、手続が全くの無駄になるというわけでもありません。
財産開示手続を行ったという事実は、さらに債務者の財産を調査するための手続である第三者からの情報取得手続を申立てるための条件でもあるため、これにより、新たな調査が可能になります。
2 財産開示手続きの流れと期間
財産開示手続は、申立てに必要な書類を揃え、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に申立てをすることで手続が始まります。
申立てを受理した裁判所は、手続の開始を決定し、概ね一ヶ月後に財産開示手続の期日を指定します。
そして、期日に間に合うよう、債務者は期日で回答する財産の目録を事前に提出し、それを受けて、債権者は債務者への質問事項を検討することとなります。
債務者が期日に出頭し財産の内容を陳述した場合、あるいは、債務者が指定された期日に出頭しなかったような場合に、手続は終結し、裁判所から財産開示手続が実施されたことを証する証明書が交付されます。
3 弁護士に財産開示手続を依頼することのメリット
(1)弁護士に依頼することで、手続をよりスムーズに行うことができます!
財産開示手続の申立ては、必ずしも弁護士に依頼しなければ採ることのできない手続ではありません。
しかし、法的な手続を行うためには、申立の要件を充足する必要がありますし、申立てに際しては、複数の書面・資料の提出を求められます。
例えば、財産開示手続においては、事前に債務者の財産状況を可能な限り調査したが特定することができなかった旨の報告書(財産調査結果報告書)を作成し、それを説明する資料の提出などが必要となります。
弁護士は、書類作成や調査の専門家ですので、弁護士にご依頼いただく場合には、手続の申立ての要件を満たしているかを迅速に検討し、申立てに必要な書類を速やかに作成・収集することが可能となります。
これにより、手続の申立てはよりスムーズなものとなるでしょう。
(2)債務者の所在地を調査することが可能な場合があります!
そもそも、金銭関係のトラブルにおいては、債務者と連絡が取れなくなってから久しく、現在の住所が分からない…。といったケースも少なからず生じるものです。
このような場合にも、弁護士は、一定の場合に、債務者の住民票の写しや除票の写しを取得することが、職務上可能ですので、債務者の所在を突き止めることができる場合があります。
没交渉だからといって、諦めてしまうのは早計なのです。
(3)オリオン法律事務所に早めのご相談を!
今回の記事では、強制執行手続のための準備・調査段階における、債務者の財産を特定する方法としての財産時開示手続を紹介いたしました。
自分が手続を利用できるのか、手続を行うためにどのような資料が必要となるのか、少しでも気になった方は、まずはオリオン法律事務所まで、お気軽にご相談ください。
当所は、池袋・渋谷・横浜・川崎に拠点を構えており、離婚や債権回収問題に豊富な知見を有する弁護士が、あなたをサポートいたします。
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