旅行が解禁になったら行ってみたい旅行先をおもしろ条例の点から検討してみた。
幕末、日本を訪れたある外国人がこう書き残しています。
「実に日本人は大の旅行好きである。」
当時本屋の店頭には、宿屋、街道、土産物等旅行者に必要な事柄が詳細に書かれた旅行案内が沢山置いてあったそうです。江戸時代、庶民の移動は制限されていましたが、伊勢参りはとても人気があったとか。昔から日本人は旅が好きだったのですね。
そんな旅が好きな人々にとっては、江戸時代以来の試練の時かも知れません。緊急事態宣言は解除されたものの、都道府県を越えた移動は依然として制限されています。
ということで、いずれ全てが解禁されるその日のために、旅行計画を立てることにしました。旅行先を選ぶ基準は様々ですが、せっかくなので、弁護士らしくおもしろい条例という観点から次の旅行先の候補でも探していきたいと思います。
条例って?
まずは、簡単に条例の位置づけを整理しておきましょう。条例とは、地方公共団体がその自治権に基づいて制定する自主法のことです。日本国憲法94条を根拠に、都道府県や市町村等の各自治体は、各々の地域のみで効力が生じるルールを各自治体の議会で制定することができます。このルールを条例といいます。最近話題の香川県のゲーム条例がこれにあたります。
条例は、罰則が定められている厳しいものから、地域のPRを目的としたユニークなものまで、多様な種類の条例があります。それでは、面白そうな地域を探してみましょう!
コロナで増えた体重をどうにかしたい方にお薦め!
鳥取砂丘で落書きしたら、罰金(鳥取県)
まずは、運動不足が深刻な方にお薦めしたい旅行先です。ポケモンGOでも話題となった鳥取砂丘。ポケモンを探しながら、運動不足解消の為のウォーキングができます。ドバイやエジプトへ行かなくても、日本で砂漠をバックにラクダに乗れる、フォトジェニックな場所でもあります。
しかし、この砂丘で面積が10平方メートルを超える文字や図形を書くと5万円以下の過料が科されるかもしれません。ちなみに10平方メートルは約6帖半ほどの広さです。無限に広がるキャンパスに思いを馳せすぎて、ナスカの地上絵ごっこをするのはやめましょう。
「日本一の鳥取砂丘を守り育てる条例」
第10条 何人も、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 文字、図形又は記号(それを内包できる最小の長方形又は円(複数の文字、図形又は記号が一体となって特定の内容を表現している場合にあっては、当該複数の文字、図形又は記号の全部を内包できるものとする。)の面積が10平方メートルを超えるものに限る。)を鳥取砂丘の地面に表示すること。
第14条 鳥取砂丘においてみだりに特定禁止行為をした者は、5万円以下の過料に処する。
参考:◆「鳥取県」
https://www.pref.tottori.lg.jp/178123.htm
食いしん坊な方にお薦め!
食べ物は胃袋で消費しろ(熊本県あさぎり町)
旅の楽しみの一つと言えば、食事。何よりも食事に重点を置いている方にお薦めしたいのが熊本県のあさぎり町。この町は米焼酎として有名な球磨焼酎の名産地。そこでこの球磨焼酎を楽しく飲む文化を広げつつ、球磨焼酎の消費拡大を目的として条例が定められています。
まぁ、地元の名産のお酒の消費拡大を目的とした、乾杯条例と言われる条例はよくあるのだけど、あさぎり町の条例はとても独特。
その内容は、単に球磨焼酎を乾杯時に飲もう!というものに留まらない。「球磨焼酎を飲みながら球磨拳(じゃんけんの様な物。江戸時代より熊本県人吉地域で行われている)をしよう」といった酒席の文化を推進する。更に、「乾杯後30分間は自席で料理を味わい、お開き前の10分間は自席に戻り、再度料理を楽しもう」、「食べ残しがないように、全ておなかで処理しろよ!」という、食品ロス対策にまで及ぶ。
食べるのが大好きな人間にはたまらない条例である。ちなみに名前が日本一長い条例でもあるようだ。
参考:◆「球磨焼酎は、ガラとチョクで盃さかずきを交わしながら飲み、球磨拳を楽しみ、食べ物は「ごちそうさん」の感謝の心と「もったいない」の精神で、胃袋に消費することを推進する条例」
https://www.town.asagiri.lg.jp/reiki/reiki_honbun/r002RG00000732.html
次は、写真撮影時にどんな顔をして写れば良いか分からない!そんなあなたにお薦め!
写真撮影時のポーズは、ワタリガニで(大阪府 泉佐野市)
旅行に行ったらやるもの、と言えば写真撮影。写真は旅の思い出になります。関西の玄関口である関西国際空港がある泉佐野市では、写真撮影の際のポーズを指定してきます。しかもそのポーズは“ワタリガニ”。まぁ、要はダブルピースってことかな?
飛行機をバックにダブルピースではい、チーズ。(他のポーズで撮っても、罰則はありません)
大阪市泉佐野市の「泉佐野市ワタリガニの普及の促進に関する条例」
第5条 市民、事業者及び市は、写真を撮影する際にワタリガニを表す姿勢をとることを求めることその他の方法により、ワタリガニの魅力を市の内外に発信し、ワタリガニの知名度の向上に努めるものとする。
https://www1.g-reiki.net/city.izumisano/reiki_honbun/k215RG00000676.html
美しい星空に癒やされたい方にお薦め!
明るくしちゃダメ! 光害防止条例 (岡山県井原市)
美しい星空に癒やされたい方にお薦めなのが、岡山県井原市。井原市美星町の周辺は天体観測に最も適した環境にあることで有名な場所。そこでこの町は、美しい星空を守るための条例を制定している。
具体的には、町中にある照明の明るさや設置角度、屋内の明かりが外に漏れることを制限するような内容が条例で定められている。夜空に対してめちゃくちゃ意識が高い地域!
この条例はいわゆる光害防止条例と言われるもので、日本初の光害防止条例だったんだよね。
参考:◆「光害防止条例制定から30周年 星守りプロジェクト活動始動」
https://soratourism.com/story/news/news191122.html
参考:◆「美しい星空を守る井原市光害防止条例」
http://www.bao.city.ibara.okayama.jp/hikari-gai/hikarigai_jorei.pdf
大人になると、なかなか褒めてもらえない…そんなあなたには、こちら!
褒め条例(兵庫県多可町)
ストレス社会の現代。この社会を生き抜くには、自己肯定感を上げておくことが非常に有益と言えます。そして自己肯定感を上げるにあたって、褒められることが大切!でも、なかなか他人からの賞賛は得られない…涙。
そんなあなたにおすすめなのが、兵庫県多可町。この町では、積極的に他人を褒めることを条例で奨励しています。
多可町で過ごすことで、自己肯定感を上げられるかもしれないね?
(住民等の役割)
第2条 住民、町内事業所に勤務する者及び町内の学校に通う児童生徒(以下「住民等」という。)は、他の人の良い言動や成果を見つけ出し、感謝の気持ちを素直に伝えるとともに、積極的に称賛することに努めるものとする。
参考:◆「多可町は一日ひと褒め条例のまち」(多可町ホームページ)
https://www.town.taka.lg.jp/category_guide/detail/id=25377
本当に多種多様な条例がありますね。いずれ来る旅行解禁の日を夢見て、旅行計画を練りたいと思います。
参考:◆「一般財団法人 地方自治研究機構」
http://www.rilg.or.jp/htdocs/005.html
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