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No Pandemic Stories

BTSの新曲、はぁー、なんでしょう、子供産むと涙腺緩むと聞きましたが、まあ序盤から泣けてしまいました私。
  
驚愕したのがタイトルのアナグラムで、“Permission To Dance”のアルファベットを入れ替えると“Stories on Pandemic”となり、更に“No Pandemic Stories”になると知った時、不思議な虚脱感と感動がありましたねぇ‥‥。制作陣に関暁夫おるな、、という都市伝説感も含め、BTSという“巨大な現象”が生まれた理由が、改めて納得できたような気がしました。



もちろん楽曲も良いです。

でもここまで世界的なうねりを生んでいる理由は音楽単体だけでなく、発信されているものが複合的で示唆に富んでいることが大きい、

人が人として持ち合わせた要素、それは例えば飽くなき探究心であったり、シンボルへの憧憬であったり、そういった、言わば“内省と再挑戦へのトリガー”探しを続けている人間のためのコンテンツが、とても豊富に周到にサーブされている、という、大いなる千夜一夜物語感があって、

それをオンタイムで体感できているという奇跡に勇気をもらう人は多いだろうし、実際私も、仕事においても家族というチームとの関わりにおいても、BTSを参考にして挑み直す力をもらうことが多いです。

ものつくりに対してここまで逃げがないというか、綿密に練り上げていく胆力は、純粋に学ぶことがとても多く、多重構造になっているBTSの楽曲に脱帽するし、制作陣の姿勢に心底敬意を感じます。

それと共に、自分とはまるで違う他者に対してのアプローチをSNSで共有すること、そして苦悩を経て7人のシナジー効果が生まれていくまでの過程を可視化してくれていることも、これもう偉業以外のなにものでもないんじゃないでしょうか。
  
すごいと思うの、アイドルがこれをやるってことが。

他者との関わりにおいて、もっと言うと、自分という内界と他者という外界との隔たりにおいて、溝を埋めていくプロセスや硬直した心が融解していくポイントを随所に散りばめてサーブしてくれているという、しかもそれを、アイドルがやってくれちゃうという。
  
人間として生きる真摯さ。

人として、母親役として、男性という対極の存在との調和を学ぶ女性役として、多くのヒントをもらっている気がしています。

まるで至高の小説を読んだようなのですよね。まさに“内省と再挑戦へのトリガー”になってくれている‥‥。合掌しかないです。

私はどこか天邪鬼(あまのじゃく)なところがあって、底抜けの健やかさに対して斜に構えることが多かったのだけど、BTSに出会ってからは、そんな視点をあっさり手放しました。

「アイドルやポップソングで心が動く私が恥ずかしい」という、勝手に設置した他者の視線で自分をジャッジする壮大な自意識過剰パフォーマンス、自分で自分にツッコミを入れてはずかしがるという不毛な一人漫才、ネタにして笑うくらいのものではあっても、そこの部分で表現の研鑽を図っているわけじゃないんですから、完全に要らない要素なんですよね。

“Permission To Dance”を聴いた時には涙が溢れてしまい、開始早々iPadを抱え込みながら「ありがとうありがとう」と嗚咽し続けるという、「あらかじめ部屋にこもって1人で見てて良かったね」という体たらくを孤独に繰り広げた午後13時ではありましたが、聴く前より後の方が格段に心が柔らかくなったのだし、アフターコロナの世界を予祝するようなあったかい曲に触れることができて本当に幸せでした。

コロナは単にウィルスとの戦いにあらず、私は、コロナによって図らずも国境を超えた共通認識が芽生えたと感じているんだけど、それはもしかしたら、「地球人としての意識の芽生え」なのかもしれないと思うし、相互理解への真の幕開けが始まっているとも感じていて、その加速度を強めているのがBTSなのだろうなと思います。

慣習、論理、資本主義、マスキュリズム、など既存の世界を世界たらしめてきた支柱が、確実に瓦解の方向に向かっていて。

壊れるということのみに反応するならば、「何を言っているの。世界はどんどん分断されて悪い方向に向かっているじゃないの。」という真逆の反応が出てくるのかもしれないけれど、

壊れることは良い悪いではなく、蒔いた種が芽を出し実を結び、枯れていき土に還るまでの、あまりにも自然で美しい生命の運動に過ぎないのだと思うし、痛みの先のカタルシスを、私は、私はね、あくまでも私個人の考えではあるけれど、人はみんなどこかで望んでいるんじゃないかな、と思ったりします。

この世界に良い曲は本当にたくさんあるし、そもそも音楽という圧倒的に微細で強力な調和世界は、ビルボードでジャッジできるようなそれではないと思うのだけど、だからこそ、BTSが発信しているという要素ひとつひとつが積み重なって紡ぎあって曼荼羅のような「この世界の本質の図解」を形作っているのだろうと感じています。



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