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村上春樹「女のいない男たち」

ゴールデングローブ賞を受賞した濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」を観る前に原作を読んでおこうとAmazonで取り寄せました。6編の小説が入っている短編集です。同タイトルの短編を除く5編の感想をメモしておきます。

「イエスタディ」村上春樹には珍しくあっけらかんとした読後感の短編。サブキャラクターの木樽が底抜けに明るくて救われます。

「独立器官」一転して救いのないエンディングで、渡会という人物の奥行きの無さが悲劇を生む物語。愛憎という言葉は同じ意味を持つと感じます。

「シェラザード」少女の持つ未熟な性がもたらす不可思議なストーリー。主人公はあくまで聞き役に徹していて、少女が主人公のように読めます。普通と異常のはざまをやつめうなぎと表現しているところに注目です。

「木野」一番好きな短編。最後に主人公の手のひらに優しく手を乗せた元妻の愛情が泣けます。

「女のいない男たち」エムの死は男たちにとって一番悲しい死なのだろうと思います。ある日唐突にやってくる別れには、誰もが祈ることしかできない。私はそれで良いと思います。

女がいないということは、男たちにとって、深い喪失感をもたらすのだと思いました。アカデミー賞にもノミネートされ注目を集める「ドライブ・マイ・カー」どんな映画になっているのか楽しみです。



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