ある雑貨屋にて6


サラさんとはその後解散することになった。自宅の電話番号だけ教えてくれた。
「証明できたら電話して」
という言葉を残して、サラさんはその公園を後にした。
サラさんへの好意を証明する。そう言われて
(わかった)
と返事をしたけど、特に何か案があるわけでは無かった。ただそれよりも先に考えなくてはいけないことがあった。夜をどう過ごそう。この時代に使えるお金は貰っているけど、そこまで多くのお金をもらっているわけではない。だけど野宿をして風呂も入らず着替えもしないでサラさんに会うのは嫌だ。だからどうすればいいかあの店主に聞いてみることにした。たしか聞きたいことがあったら、携帯電話を使ってくれと手紙に書いてあったはずだ。カバンに入っていた携帯電話を開き、連絡帳から唯一登録されていた(理趣経店主)という連絡先に電話をかけてみた。それはすぐに繋がった。
「どうされました?戻られますか?」
店主の声だった。私はすかさず事情を説明した。すると店主は
「なら一度戻られてください。あんまり長くその状態でいるのは良くないので、日を改めてもう一度そうなりましょう。」
と答えた。私はそれを了承し、カバンの中から手紙を探す。それを破らないと戻れないと書いてあったからだ。
私は手紙を見つけ出し、それを破いた。すると突然目の前があの店に変わった。店主が駆け寄り
「お疲れ様です。どうでした?どうなりました?」
と私に言った。私は満面の笑みで
「最高でした。」
とだけ言った。
店主はそれを聞いて
「それは良かった。ではまた来月でもお越しください。お代は全て終わった時で構いませんから。」
と言った。
「なぜ来月?明日ではダメですか?」
と私が言うと店主は
「明日では準備が出来ていないと思います。万全を期す為にも1ヶ月くらいは・・・」
と言った。なぜ1ヶ月も準備がいるのかと思ったが、実際私がこの店で体験していたのはタイムスリップだ。20年という月日を逆走するのに必要な準備なら、早いほうなのかもしれない。そう思い私はそれを了承した。そして1ヶ月後の同じ時間に、この店に伺うことを店主に伝えた。そして店を後にした。その店を出た後私はまっすぐ自宅に向かった。疲れのせいか足取りが重く、平坦な道なのに息があがり始めていた。それにすごくお腹が空いた。20年前のあの町であんなに食べたのにまるで無かったことになっているみたいだ。その為通り道にあったコンビニでおにぎりを買い、店内で食べてすぐにまた歩き出した。隣町と言ってもたいした距離ではなく、30分も歩けば自宅のある町に着く。だが
(次からはバスを使おう)
そう思うくらい今日の疲れは異常だった。
自宅に着き、すぐにベッドに横になると私はそのまま眠りにつき夢を見た。その夢とはタイムスリップでみた20年前のあの町そっくりの夢だった。