ある雑貨屋にて2

初めてサラさんにスーパーで会ってから、しばらく時は流れたそんなある日、私は初めてサラさんの旦那さんに会うことができた。いつものスーパーでサラさんの隣に立ち、カートを押すその人は背も高く、割と恰幅の良い人だった。私はサラさんにまず挨拶をすると、その次に旦那さんに挨拶をした。
「お疲れ様です。いつもサラさんにはお世話になってます。」
と私は言うと、旦那さんは
「いえいえこちらこそいつもありがとうございます。というか大丈夫ですか?うちの奥さんに虐められてませんか笑?」
と初対面の私に気を遣い、ちょっとしたジョークを挟んできた。そうした気遣いを初対面の私にしてくれるあたり、きっと人当たりが良い人なんだろう。私はお世話になっている先輩の旦那さんの前で、緊張し過ぎて泣きそうになっていた。だがそのジョークのおかげで平静を装う程度の余裕にあやかれた。リサさんはそのジョークを聞いて
「ちょっと!そんなことしたことないでしょ。湯川くんそんなことないよね。・・・ね!」
と答えた。私が返答に戸惑っていたら、それにサラさんは少し焦ったのか。語尾を強めにもう一度繰り返した。
「はい。そんなことありません。」
私はそう答えると
旦那さんはそんな私たちの様子を見て豪快に笑い。私もその笑いに釣られて笑みをこぼした。
「もう。」
と言って頬を少し膨らましたサラさんも最後には少し笑っていた。私から見たら理想的とすら思えるその夫婦の空気感に、憧れと嫉妬を半々に抱きつつその後もたまに旦那さんと会って話をすることになった。そしてその度、半々で釣り合っていたはずの憧れと嫉妬の天秤は、嫉妬の方へと傾いていった。
サラさんと旦那さんの関係に、嫉妬を覚えるようになってからいつものスーパーに行くことに抵抗を覚えるようになってきた。偶然会うのがリサさんだけなら良いのだが、旦那さんやましてや子供がいるかもしれないと思うとなんだか行く気になれないのだ。後からサラさんに聞いたのだが、普段の買い物はサラさん1人で行くらしい。しかし旦那さんが仕事から早めに帰れた日は2人で一緒に買い物に来るようだった。
「昔は子供も必ずついて来てたんだけどね。今はほとんどついてこないね。」
とサラさんは言っていたが、たまに子供も一緒になって出掛けているらしいので、家族の仲は良いみたいだ。
 そんなある日、仕事終わりにいつものスーパーではなく、隣町のスーパーに行くことにした。ここなら万に一つと会うことはないだろうと思ったからだ。そして買い物を終えると、とある個人経営の店を見つけた。その店の名前は「理趣経」今の自分の気持ちになんてぴったりなんだろうと思い、入ってみることにした。