ある雑貨屋にて7


「☆♪○*×€÷〒-」
携帯のアラームが鳴り、私は目を覚ます。
(私への気持ちを証明して)
起きてすぐ20年前のサラさんからの言葉を思い出す。
「よし買いに行こう。」
今日は仕事が休みだから午前中に買い物をし、午後に20年前のサラさんに会いに行こうと決めていた。証明の仕方は決まっていた。まるで夢の中でも考え続けていたかのように、朝起きたらその答えが思いついた。私はすぐにシャワーを浴び、コーヒーだけ飲んで家を出た。最寄りの駅で電車に乗り、近くにデパートのある駅に降りる。駅構内には、新作のアクセサリーや香水などの、着飾るためのアイテムの広告が目立っていた。そのせいかその駅は、普段使っている駅よりも上品に見えた。

その日の午後あの店に着いた。買い物に時間を使いすぎて、時刻は15時をまわろうとしていた。
「失礼します」
私はそれだけ言ってその店に入った。相変わらずお客はいないみたいで、以前のように店主だけがそこにはいた。
「いらっしゃいませ。あぁ湯川さんお久しぶりです。お元気そうであれからどうです。」
とその店主言った。
「ええ元気ですよ。というよりやっと元気になりました。なんだか風邪を引いたみたいにあれから1ヶ月くらい体がだるかったんですよ。」
と私は答えた。これは嘘ではなく、実際にそうだった。日を追うごとに楽にはなっていったが、身体がだるく何かをしようという気力が衰えているみたいだった。今考えれば、20年前に再び戻る為の準備に1ヶ月もかかってくれて良かった。たとえ戻れたとしてもあの状態では満足にサラさんと交流することなどできなかっただろう。そんなことを考えていると
「お仕事の方は大丈夫でした?」
と店主が言った。私は
「大変でしたけどデスクワークですからね。なんとかなりました。営業職とかだったら使い物にならなかったと思います。」
と答えた。
「そうですか、それは大変でしたね。・・・それでは始めましょうか。」
店主はそういうと、私を店の奥にある誘導した。そこには前回同様白い粉のようなもので出来た円があった。私は迷いなくその円に入り、目を瞑った。
「それではいきますね。」
その店主の言葉と共に私は意識を失った。
 目を覚ますととある駅の前にいた。周りを見渡すと夢にまで見たあの景色が広がっていた。というか私の場合、本当にこの街の夢を何度か見ていた。ただいつもサラさんには会えなかった。私はその夢を見るたび、自分のサラさんへの執着に気持ち悪さを覚えた。しかし今となっては自分の決意を後押ししてくれている大切な感情だ。
(さあサラさんに会わなくては)
と私は決意した。本来であれば、一度会っただけの人にそう何度も会えるわけはない。しかしなぜかすぐに会える気がしていた。夢でさえ会えなかったのに今回は必ず会えると思ってた。もしかした運命の赤い糸とはこういうものなんじゃないかと思ってすらいた。
「サラさんいらっしゃいますか?」
私は声を上げた。周囲の人が私を見る中、1人だけ顔を隠した人がいた。リサさんである。
「サラさん!お久しぶりです。」
私はそう言って手を振ると、サラさんは私の振っている手を取り走り出した。駅には丁度電車が来ていて、駅には大勢の人がいた。リサさんは私の手を掴みながら、その人混みをかき分けるようにして走った。少し走り駅から少し離れた商店街の方まで来ると、サラさんは私に話し始めた。
「ちょっとあんたバカじゃないの!あんな大勢の前で恥ずかしい真似しないでよ。」
サラさんは少し怒った様子で私に話しかけてきた。少し頬を膨らまし、眉間に皺を寄せた顔で話すサラさんからは、少し20年後の面影を感じるものがあった。
(この人は、きっと昔から変わってないんだろうな。どんな人に対しても真っ直ぐで対応する人なんだ。)
そんなことを思いながら。私はサラさんの言葉に応える。
「すいませんでした。ただあそこで名前を呼べば、あなたに必ず会える気がしてたのでつい。」
私はそう言うとサラさんは
「なにそれ。もう2度としないでね。」
と答えた。20年前のサラさんに会うのはこれで2回目だが、すでに前回よりも距離が近く感じる。
 (     もう ってことはこれからもあってくれる予定なんだろうか)
と私は思った。そんなことを考えていると続けて
「で証明してくれるの?その為に私の名前を呼んだんでしょ?」
とサラさんは言った。私は首を縦に振るとポケットから小さな箱を出した。それは現代で販売されていたとあるブランドの新作の指輪とケースだった。