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爪を研ぐ

「そんなにいちいち確認しなくて良いって言う人に限って、細かいことに口出しするよね。」

「そうそう。それもさ、上司に報告しなきゃならない話かどうかってとこばっかり気にして、中身なんてどうでもいいって感じなんだよね。」

「それでさ、これは上部審議案件ですって言うと、突然ネチネチ言い始めて。今回は我々だけで決めればいいですって言った途端に、あっそう、じゃあお任せ、みたいに態度がガラッと変わるし。」

「結局、上の顔色しか見てないんだよね。そんな会社がまともに儲かってるとは思えないんだけど。」

「見かけは儲かってるみたいだけど、絶対裏があると思う。」

「グループ内で利益回してるだけとかね。」

「十分あり得るのが怖いとこだよね。」

「そういう人達ってさ、こっちをサンドバッグに使ったりしない。」

「するする。恫喝系と嫌味系と分かれるけど、言ってることもコロコロ変わるし、あと、すっごくいい加減。やれば嫌味言われるし、ちょっと気に入らないだけで怒ったりするし。」

「スルー力で対応するしかないよね。気にしてたら折れちゃうよ。」

「世の中にはそういう人もいるんだなあと思ってやってくしかないよね。」

「そもそも引き継ぎがゼロなんでしょ。」

「そう。肝心な情報が全然共有されてなくて、事が起こってからあの案件はこうだ、その人はああだって。起こる前、連絡する前に言ってくれなきゃ意味ないでしょうに。」

「もうさ、適当にやりなよ。」

「いつ抜けてもいいように心して適当にやります。ただね、こんなに頭を使わない数ヶ月はここ数年なかったから、自分がアホになりそうで怖いの。」

「小説と海外の記事読みまくったら。」

「だよね。仕事以外で頭を使わないと。」

「鈍感力をつけるつもりがほんとに鈍くなっちゃったら困るもんね。」

「爪だけは研いでおきます。」

End

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