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自然の理どおりに機能しているわたしのからだ。

とてもよく晴れた木曜日の午後だがコインランドリーに来ている。数日前に腰がいかれて洗濯物が溜まりに溜まり、まとめて洗濯したものの物干し場の許容量を超えてしまったためである。乾燥料金300円を払ってふわふわのバスタオルを手に入れるんだ。

近所の鍼灸師の友人に鍼を打ってもらっていまは少し軽減したが、昨日までは震えるほど腰が痛かった。もともと事務所をもたないフリーランスの自分は自粛などしなくてもじゅうぶんに運動不足であり、気分以外のところでさしたる影響はないだろうと考えていたのだがとんでもなかった。週に一度、谷中の公民館の畳の間を借り、もとボディビルダーのトレーナーさんからパーソナル筋力トレーニングを受けるようになってもう10年近くになるが、これが緊急事態宣言によりできなくなった。もともと運動は嫌いなのでトレーナーさんに見張られていなければ何もするはずもなく、仕事などの不安を抱えながら鈍重に過ごしていたところ、2週間を過ぎたところでするすると体重が落ちてきた。はじめのほうこそ外食をしなくなって痩せてきたのかもとほくほくしたが、3週目に3日で1キロ減ったのを見てやっと気づいた。これ減ってんの脂肪じゃねえ、筋肉だ。

そう思ったときにはもう遅かった。SNSで見つけたへんな抜き型を使ってクッキーを焼いていたところ、なんの前触れもなく、腰がミシミシとバーチャルな音を立てて石化しはじめた。あ、これ、たぶんもうすぐぎっくり腰だ。これまで経験したことはなかったが確信をもってそう思った。すぐさまスマホを操作して鍼灸師の友人に助けを求め、その日の夜に応急処置をしてもらう。完全に動けなくなる事態は避けることができたが、それでもまだ回復にはもう少し時間がかかりそうだ。

生まれてはじめてのぎっくり未遂が起きた理由は明らかである。筋トレの中断および平時以上に活動量が減ったことによる筋力低下、からだの硬化。それにしてもヒトのからだの仕組みというのはよくできていて、筋肉も骨も、荷重や運動に対するセンサーが機能しており生きているうえで必要ない組織とみなされたものは即座に分解されていく。宇宙飛行士が帰還したら歩けない(宇宙兄弟にそういうシーン、出てきますよね)、寝たきりの人が寝たきりになってしまうのは、重力の影響を受けなくなったからだが筋肉も骨も不要と判断するためだ。10年かけて維持してきたわたしの筋肉は3週間で消え去ってゆく。しっかり自然の理どおりに機能しているわたしのからだ。

暇にあかしてベビーリーフの種などをまいてみたのだが、数日の雨のあと、よちよちと芽吹いていた。これも自然の理。


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