居酒屋カウンターのナレッジシェア

異常に暑い。昨晩休んだら体のだるさはとれたものの、その代わり仕事はしわしわにしわ寄せされている。日中は外に出ずにせっせと原稿を書いた。ねこはクッションフロアの洗面所を夏の居場所と決めているようで、ドアを開けると長くなって転がっており、とても心外そうにわたしを見遣る。いつも半ギレの目でわたしを見るねこはかわいくて笑ってしまう。なに怒ってんの。

夕方、約束していたちょい飯に近所に出かけていく。昼間よりはましだが、十分に重くじっとりとした熱気が街に充満している。居酒屋のカウンターに座ると、調理場の棚にジャンプがたくさん重ねて置いてあり、ページのあいだに刃物が突っ込んであるのが見える。あれはどういうことだ、と友人と話し合い、友人がトイレに立ったあいだ暇だったので焼き場の大将にどうしてあんなふうになってるんですか、と尋ねてみた。すると、新聞紙や漫画誌の紙には油が含まれているのでこうしておくと包丁が錆びないんだ、むかしからこうしてて、いまもお客さんに頼んで漫画誌を持ってきてもらっては溜めておいてときどきとりかえるのさ、という。知らなかった。油。新聞や漫画誌のインクの作用だろうか。改良を重ねた現代のそれらは紙に油が含まれてるなんてことあるのだろうかと思ったが、ずっと長いあいだそうしていて、じっさいに包丁が錆びずにいられるのならなんの問題もない。そうなんですね知らなかった、わたし自分ちの包丁錆びさせちゃった、とぼやいたら、持ってきたら研いであげるよ、と大将は親切だった。

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