ねこはわたしがじぶんを追い詰めにきてると思っている

緊急地震速報が家の中でいっぺんに3台鳴り響く。仕事をしていたので起きてはいたが、緊急っぽさを追求しつくしたアラートはいつもながら心臓への負荷が高い。部屋を出ていくと息子は風呂に入っており娘は部屋で臥している。頭が痛い、体温計もってきて、どうせ微熱だろうけどというので体温計をわたすとなんと38.1℃。微熱じゃない。とりあえず水と解熱剤を渡す。あとでアイスを買ってこよう。

わたしの顔を見れば逃げ出す2匹のねこについて考える。わたしが近づくとわたしから遠ざかろうとするのでねこは結果的にわたしの進行方向へと逃げる。いやわたしそっち行くんだけど、と声をかけても通じないから、ねこはわたしがじぶんを追い詰めにきてると思っているだろう。違います。大きな地震が起きたら、わたしはわたしの顔を見れば逃げ出す2匹のねこを追いかけ回して捕獲して連れて逃げることができるのだろうか。元夫の実家は東北にあり、震災のとき両親はあんなことになる予想は露ほどもしないまま、でも身についた防災意識でとりあえずすぐに避難所へと向かったので助かった。津波がほんとうに来るなんて露ほども思っていなかったのでねこは置いていった。義母は引き返してねこを迎えにいこうとしたが周囲に止められて、だからいまも健在だ。3月11日から1週間か2週間か経ってからようやく、ゴムボートに乗せてもらってねこを迎えにいったら、ねこは和室の畳がぷかぷか浮いてるのに乗ってじっとしていたそうだ。わたしはすこしでも大きな地震があるたびに、畳の上でじっとしていたねこのことを思う。

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