こっから入れますよみたいな表示しておいて

がんらい方向音痴なもので、スティーブ・ジョブズがiPhoneというすごいものを売り出す前はコンパクトな東京の地図をつねにかばんに入れていた。たとえほかのどんな機能がなくても、地図が見られるという一点だけでわたしはiPhoneを買ったであろう。ただしスマートフォンの地図はときどき騙してくる。方向を示すふんわりした矢印がぜんぜんあらぬほうを向いていることもあるし、地図に従って歩いているつもりが、あっ違った違った、みたいなかんじで青い丸が慌てて一本ずれた道からつつーっと移動してきて、いやさっきからずっとあなたの隣歩いてましたが、みたいな顔をすることもある。まあ百歩譲ってそれは許すよ、誰にでも勘違いとか、ぼけっとしてた、とかはあるから。わたしが一番許せないのはね、おまえさ、建物の入り口に案内しろよ。こっから入れますよみたいな表示しておいて、行ってみたら壁、みたいなのがほんと腹立つんだわ。それで壁に沿ってぐるぐるしたら、いつのまにかぜんぜん違うビルのほうにいっちゃうじゃん。ほんとやめて、何回言ったら直るのそれ。

そんな悪態を心のうちでつきながら日本橋の街を5分間ほど彷徨い、やっと今日の仕事場にたどりつく。セミナーの採録記事を書くために会場に潜りこむ仕事。運動が苦手でも得意でも体育が好きになれるような授業のやりかた、という話を聞いた。どうするのかというと、競技のルールを変えちゃえばいいのだという。バスケはドリブルに能力差が出過ぎるから、ドリブルしないで走っていい、でもシュート成功したら退場し他の子と交代する。そうするとゲームメイクできる子はシュートをしなくなり苦手な子にパスを回してシュートを促すのだという。すると苦手な子はチャンスが増え、成功すれば賞賛され、しかもとっとと抜けられる。すげえ。システムをつくって課題解決する話がわたしはだいすきなんだ。じぶんが固定観念を壊して新しいことを考えるのが苦手なせいか、脳内にパーっとはなやぐ魔法がかかるような(©︎オザケン)仕組みに出逢うとものすごくハッピーな気分になる。ビッグイシューも仕組みがすげえと思うから見かけたら必ず買う、たとえ一日何回も遭遇しても何回でも買う。すきな仕組みに自分を組み込んでいる。

セミナーを聴いてる途中で、友人から今夜これから飲みにいかないかとLINEが入る。この者は先日もいったん約束をしたものの「おなかがすいてどうしても待てないから今日はリスケさせて」とまったく理解できない理由で反故にした者である。5歳なのかな、と思っていたがさすがに悪いことをしたとは感じていたようで、その日の飲み代はすべて出してくれた。とうもろこしのさつま揚げが季節らしさを出していて、おいしいね、これ、とか言いながら食べた。

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