ソファ寝落ちを公共空間で再現している人

午前中の取材に向けて頭をチューニングしながら電車を乗り継いでいく。なんかかっこいいことを言っているふうだが頭の切り替えがへたくそなだけである。電車を乗り継ぐ階段のとちゅうにモンベルの日傘のカバーが落ちているのが眼に入って、咄嗟に数年前になくしたわたしのカバー、あったー!おかえり!って拾って嬉々として使いはじめるところまでたいへんクリアに脳がイメージしてしまってあやうくほんとうにそう思い込みそうになり、そのイメージを打ち消すのにまた脳のリソースを食う。なにやってんだろうわたしの脳。

取材は、ほうっておいてもおもしろい話をしてくれる方々なので今日もまたよいお話を聞いた、とごきげんに無事終了した。インタビュイーの方が「インタビューじゃなくて自分で記事書くんだったらこんな話出てこなかったと思う」とおっしゃってくださって、わたしがちょっとでも媒介してこの方がおもしろい話をしてくれているのだとしたら、それはとてもうれしいことだと思った。

取材が終わっておひるのパンを買い、作業場に向かってまた電車に乗る。車両に乗り込んだら優先席の3人がけシートをソファのように使って、若い男子が寝ていた。このシートは中ほどに手すりバーがついている珍しいタイプだったが、そのバーに組んだ足の膝をうまいこと預けて安定させている。脱ぎ捨てた靴はソファの足元に転がるスリッパのようだし、スマホも寝落ちしたときのごとくいい感じに床に落ちている。平日の昼下がりにこんなにみごとにソファ寝落ちを公共空間で再現している人はこれまで見たことはなかったので、ほんらいならば迷惑行為なのだろうけれども、よいパフォーマンスを見た、という気分になった。

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