乱杭歯前夜
夏休み中にあちこち出かけていたため自宅の洗面所でじっくり顔面を見るのがひさしぶりだったのだが、歯の手入れをしようと鏡をのぞきこんでぎょっとした。歯並びが、歯並びが変わっている。前歯が両サイドから圧迫され、乱杭歯前夜といった様相を呈している。なおかつ重なりはじめた歯間がいやな色をしている気もする。歯並びはよくもないけど悪くもない、というかんじで気にも留めていなかったのでとても焦って歯医者のWEB予約にアクセスする。幸い翌日の夜に空き枠があってすかさず確保した。
歯科衛生士に気になるところはないかと訊かれてすぐさま歯並び訴えをし、診てもらったところ、歯ぐきがやせて支えの力が減じ、さらに食いしばり癖のせいで歯が移動しちゃってるんだそうだ。ようするに加齢。母の顔が浮かんだ。出産時に撮った親子三代の写真を見て、同僚たちは赤子のことよりもまず先に母とわたしがそっくりであることに言及していた。母の顔は30年後の自分の顔である、とその際意識したものだ。肌のたるみやシミシワも加齢を感じさせる変化だが、歯もけっこう、年齢を感じさせる因子のひとつだなあと、ゴリゴリと歯石を削られながら思いを馳せた。歯間のいやな色はむし歯ではなく、色素沈着だったのでクリーニングによってきれいになった。きれいになった歯はなんとなくむずむずしている。
帰ってからNetflixで「ボーイフレンド」のつづきをぜんぶ観た。共感性羞恥がつよすぎるせいかリアリティショーを一切観ちゃいられないわたしでも、たいへん楽しんで観られた。愛するには技術が必要だと、改めて思った。
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