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ありていにいってやばい飲みもの

馴染みのクライアントに出向いてインタビュー仕事。会社にもポジティブな空気とそうでもない空気というのはあって、前向きで建設的にしごとを進められる人々の話は聞いていてこちらも良い心を分けてもらったような気分になる。ここまで書いてわが身を振り返るとつねにぼやきと悪態がこぼれ出していて、ぜんぜんポジティブな空気出してないじゃん!ごめん周りのみんな!と反省した。反省したけどあまり変われないと思う。

友人に、ここのビリヤニはぜったいに食べたほうがいいので行くように教えてもらったけど店名がうろおぼえだったのを確認したくてメッセージを送る。ほどなく返ってきて、そんでしばらく会っていなかったから会おう、わかった仲間にも連絡しよう、来週は旅に出るけど今週はあいてるよ、よし明日いける!と、あっというまに決まる。こういうバイブスが好きだぞこの面々。とあるローカルな駅にある信じられない価格設定の店に集合する。酒は180円とかで自販機のジュースより安く、料理はもっとも高くて牛串400円、目玉焼きというメニューは卵を何個追加しても同じ値段なので、卵10個、という狂ったオーダーも可能だ。今日は控えめにして、3人で4個にしておいた。

早めの時間に行くと、ここの大将はだいたい路面に立ってるかいちばん手前の席に座ってジャンプか新聞を読んでいる。今日も路面に立ってて愛想よく迎え入れてもらった。店内には先客がいてほぼ満席。珍しく男性ばかり8名ほどの団体が中央に陣取っていた。なかでもひとり、絵に描いたように出来上がっている図体のでかい男がいて、「もうね、ぶどうジュース一杯しかね、飲んでないんっすよ!」と絶叫している。テーブルを見ると8人の男たちの前にはそれぞれ小さなコップがおいてあり、濃いバイスのような紫ピンクの液体がなみなみつがれていた。あれはなんだ。あれがぶどうジュースなのか。友人に聞いてみると、あれははブー酎というのだ、コップ一杯の焼酎に赤ワインまたはぶどうシロップを垂らしてなにやらそれらしくした、ありていにいってやばい飲みものだ、という。好奇心旺盛で酒飲みの友人が二度と飲みたくない、と顔を歪めるブー酎によって、あの男は撃墜されたのであろう。見ていると男たちの前のブー酎はいっこうに減る気配もなく、ひとりだけ壊れた男が「ぶどうジュースね、一杯しか!(以下略)」を20回は繰り返していた。あまりにリピートするのでぶどうジュースのことしか考えられなくなってしまい、河岸を変えたあとも友人たちとぶどうジュース男のなりわいや他の7人との関係性などについてストーリーをつくって遊んだ。

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