こちらまりこ

この日記を始めた当初は4日分くらい書き溜めてからはじめたのだけれど、そんなのあっというまに追い越されてしまった。昨日は話したいなあと思った友人に連絡をしたら今夜でも都合が合うよと言ってくれたので、やったー、と思って約束をとりつける。渋谷の路上で待ち合わせをし、前から行ってみたいと思っていたお店に飛び込みで席を聞いてみたら、トイレの前ですこし狭い席なら空いてるんですが…とエクスキューズを投げかけられ、いいですよ別に、といって入る。店員の青年たちはおそろしくホスタピリティがよくまっすぐ目を見てメニューの説明をしてくれるので、従順におすすめのおいしそうなものを注文してしまう。じっさいにとてもおいしい、初夏!という味わいの料理たち。トイレの出入りはとくに気にならないが、なんかすごいいいにおいのする女の子が入っていった!と話しながら思い、しばらくしたらまたすごいいいにおいの女の子が入っていった!と思って、その時点であっいいにおいの女の子じゃなくていいにおいのトイレだ、と気づいた。いや、ほんとにいいにおいだった。なんの香りを使っているのか確かめればよかったな。わたしはけっこういいにおいがだいすきで、好きな香りの香水はふんぱつして買ってしまうし、いいにおいが移った服をしばらく洗濯しないでおいたりもしてしまう。高校生のときに好きだった男の子のつけてたにおいも今でも思い出せる。あれ、なんの香りをつけてたんだろうな。

そのあと、ちょっとした流れがあって場所を移動して他グループと合流。もう帰らなきゃいけないと言ってた人が、わたしたちが到着するのを待っていてくれた。とてもうれしそうで、友人のことがほんとうに好きなんだろうな、と思う。その人が帰ったあとはわたしは初めてお話しする人たちだったのだが、その中の一人がわたしの名前を「まりこ…さん?」とたしかめる。ちがうよヒロコだよ、と訂正するが、何時間か経ってわれわれが先に帰るよと挨拶すると「えーと、まりこ…さん?」とまた言う。そんなにわたしの顔を見たらまりことしか思えないのか。正確にまりことまちがうのでおもしろくなってきてしまった。次に会う機会があったとしてそのときも「まりこ…さん?」と言ったら、もうわたしはまりこでいい。

山岸凉子の漫画のような、日常のなかに佇んでいる鬼を見てしまった気分の夜だった。

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