20.2.14 食事会なんて。

好きな本屋さんはありますか?と話しかけられたとき、とっさに荻窪のTitleです。と答えてしまったのだけど、実際は一度しか行ったことは無くて、でも絶対に好きだという確信があったからそう答えたのだけどモヤモヤしている。足を運んだ回数だと、池袋のジュンク堂や早稲田のあゆみブックスの方が多いのだけど、その時の質問には、本屋に行く行為そのものに対するストーリーや意外性を求められたような、つまりは自分のことを話さなければけないのだ、という初対面同士の会話における明らかなマナーに気付くのにも時間がかかって、変な緊張から単語だけが出てしまった。

その質問をしてくれた人と囲んだテーブルに友達は一人もいなくて、そういう場に行くこと自体が減っているのだと反省した。どういう顔をすればいいのか分からない場所が久しぶりで、ずっと帰りたかった。場をリードするお喋りの人が僕の隣にいたのだけど、話す途中で全員の目を見るマナーのある人で。マナーなのか?僕はその人の真横に座っていたせいで、その人が僕に向けて首を左に降る瞬間は、毎回一対一の空気が生まれる。自分の反応が確認されるそのタイミングは、上手く頷いたり相槌を挟んだりした方がいいのだとわかってからは、その方が話している間は意識を集中させていた。

でも途中から、自分は何をやっているんだろうとイライラしてきて、生ビールの次に瓶ビールを一人で注文したり、知らない名前のウイスキーをハイボールでどんどん頼んだ。どうせ人の金だ。ヤケだ。いることが気まずい場所でも、美味しいお酒が美味しいことに少し感動した。会話が弾む席よりもしっかり味わえた気がする。

本屋の話をしてくれた方は、新潟の本屋を教えてくれた。名前は失念したのだけれど、入口には南京錠がかかっていて、訪ねる際にお店にメールすると開錠番号を教えてくれる無人書店らしい。一般的な新刊書店ではなくて、複数の個人が仕切られた棚のスペースを間借りする店は、新潟の学生の方が始めた本屋というから驚いた。同時に、やっぱり、ある程度強いエピソードを話すべき会話のラリーだったのだと答え合わせされてしまった気がして再び反省する。この先の思考はどう頑張ってもtiteに失礼なのだけど、とりあえず社会人の会話は肩が凝りそうだなと再確認した。
昨年の「山里亮太の不毛な議論」の山ちゃん結婚発表回で、ゲストに来たしずちゃんに対して突然、好きなお酒は何かというリスナーメールが読まれ、しずちゃんが「ロンサカパです」と答えたことを思い出した。山ちゃんに対する祝福メールが読まれる中でのボケメールなのだけど、好きなモノを瞬時に聞かれたときの対応として強く心に残っている。語感が面白いし、話も広がるし、たぶん本当のことだから。そういうことを山のように用意しないといけないのだ、と気づく大学四年生は遅いのだろうか。たりないふたりで話していたのってこういうシチュエーションだったのか。

21時過ぎに会は解散になって、さっさと撤収しようと思っていたら、一度も話さなかった人から二軒目に誘われた。隣に座る人への頷きや相槌を諦め、逆方向にある窓の夜景に見とれる僕のクソ芝居を、知ってるぞという目で見ていた人からの誘いだった。連れて行かれたのは窓のない店だったのでどうしようかと思ったけど、タバコが吸えるところだったので助かった。いや、その日初めて納得する話や、興味の惹かれる話ができたので、ありがたい誘いだった。ロンサカパを飲んだ。

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