2020.3.20 クラフトビールを求めて地元探訪

『獣になれない私たち』の5TAPがある通りは、雑司ヶ谷の鬼子母神から延びる道だ。
よく知った道だから、5TAPがないことも知っている。タクラマカン斎藤はいない。

ドラマを数日間で一気見するうちに、クラフトビールが飲みたくなるのは必然。焼酎なら芋、日本酒なら辛口、ビールならサッポロが好きな身としては、爽やかで香り豊かなイメージのクラフトビールは苦手だった。でも、缶ビールじゃ解消されないビールへの乾きは増していく。

最寄り駅に到着する間際に車窓から見える「ビール」の文字にはずいぶん昔から気付いていた(後で聞いたらオープンしてもう5年)。普段なら、常連や顔見知りが夜な夜な集うような地元の飲み屋に一人で入る勇気はないのだけど(かの”北区赤羽”に近い街であることも自分をビビらせていた)その日の俺はオアシスを求める象だった。象も獣だ舐めんな。

線路沿いにある店の名前をそういえば覚えようともしなかったけど、とにかくアタリだった。名前を覚えなくても場所を知っている。
外観から全て木目調の店は、入ってすぐにカウンターがあって、二階にはテーブル席があることが頭上のモニターから分かった。カウンターは5人並べばいっぱいになるところが誰もいなくて、元気そうなお兄さん二人が洗い物をしていたからカウンターに決めた。今思い出しても勇気が天井に達していたと思う。

ビールの説明を一通りしてもらって、キンカンで作ったピルスナーをもらった。キンカン、ヘーゼルナッツ、黒糖などで造られたビールが6種類あって、何でもビールになるのだと教えてもらう。知らない世界だ。
なぜか「ビーバップハイスクール』の映画版が吊り下げられたテレビに流れていて、荒唐無稽な迷作っぷりを笑いながら楽しく飲む。屋外スケートリンクで繰り広げられる決闘の最中、味方が上空からパラシュートで助太刀にやってくるシーンが一番面白かった。こんな意味不明な演出のためにいくらかかっているんだろう。窪塚もびっくりだろ。

地元の人間だけどここらを何も知らないと言う一見にも優しい人たちだった。ここのうどん屋は昼から行列ができるとか、あの店はバンズから全て手作りの絶品ハンバーガーを出すとか、ここは変わった魚を食わせてくれるとか。地元の中心だと思っていた商店街から、一本外に抜けた通りの方に新しく旨い店が並んでいたことをようやく知る。どの店も仲がいいらしくて、地元の輪がやっぱりあるんだろうとビビりながらも、すべて必ず行こうと決める。

途中でやってきた常連の人は、伝統芸能の世界に腰を据えた同い年の人で、稽古終わりにいつも立ち寄るらしい。この日自分が玉田企画の『今が、オールタイムベスト』を見に行った話や、急増したライブイベントの無料配信についてなんかを話した。話せた。話の中身というよりも、自分がこういうときに話せることが本当に嬉しかった。そんなこともキウイでできた黒ビールを頼むころには忘れていて、飲み終わると閉店時間だった。

アルコールが入った状態でも電車に乗らないで帰宅できる快感を確かめながら帰って、『Q10』を何話か見て寝た。
今度は、ワイングラスで提供される度数の高いビールを飲んでみる。そういえば、あのドラマは酒場が舞台のくせに酔っ払いが出てこないのは如何なものか。いや、酒の勢いで生まれる展開は何度かあったし、飲兵衛キャラがでたらシットコムみたいになってしまうか。

働き始めたら自然と探索するようになるだろうけど、今のうちから少しずつ足を延ばし始めた。

https://twitter.com/azami2772/status/1241374818945003521?s=20

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?