見出し画像

好きな椅子。

眠い目を擦る。
顔に近づけた指から,今朝の食器洗い洗剤の匂いがした。
まだ、夕食のことは考えたくない。

好きな椅子がある。
映画館の、それも少し幅の広めの椅子。それがある映画館で昼寝がしたい。あんなにうるさくて光る部屋みたいな所が、なぜだかリラックスできる。
周りに他人が大勢いるのもマイナス要素でしか無いように思うが、不思議と気にならない。寧ろ、自宅の布団の上よりも寝やすいことだってある。
スマホの電源を切っていることと、その間、電話に出ない「映画館」という理由が用意されていること。そして、大きな音で自分の耳が塞がれていること。この辺が大事なポイントだ。
トイレの「音姫」理論と呼ぶようにしている。または、「どちらの男が顔を洗うかクイズ」と言い換えてもいい。

所詮は自分の主観で生きている人間だから、「今自分に聞こえていないということは、相手にも聞こえていない」、「あの人も汚れていないから、自分も綺麗だ」というだけで、現実では何が起きているかはさほど重要ではないのだ。
最近では音楽メーカーが、良い音を聞くために静寂を作り出す時代なのだから、騒音の中に静かさを見出してもいいじゃないか。

そんな勝手なことを思い、眠い目を擦る。
夕食は何にしようか。


頂いたサポートは、知識の広げるために使わせてもらいます。是非、サポートよろしくお願いします。