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雪花の夜に。

トンネルの先にチラチラと雪が舞っていた。

月の見えない夜を車で走る。風はなく、空から落ちてくる白い雪が踊る。身をひるがえして踊る雪に視界が埋められ、少しばかり時間が止まってしまったようだった。
ただ一つ、逆らうように雪を掻き分けて登っていく吐息だけがその周りの時間を溶かしていた。

前の方から車が来たようだ。ヘッドライトの光が見える。
車の屋根に雪を載せた姿は凛々しく、数多の戦いを生き抜いた野生動物かのように迫ってくる。闘気すら立ち昇るように見えるその姿にこちらは萎縮してしまった。
――音が遠ざかる。

テールランプの残像すら、雪にもう消えた。
大輪の雪がフロントガラスに咲き始めた頃に。


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