見出し画像

0日目 自動車学校への入校許可を得るまで


免許が欲しい。

「若者の車離れ」なんて言われているように(といってももう若くはないけれど)、友人や同僚に車を持っている人は少ないし、東京で働いて東京で暮らしていれば、公共交通機関だけでも十分暮らしていける。
免許証取得には2~30万かかる。結構大きな出費だ。
それでも免許が欲しい。そう思うようになった理由を以下に記す。

・カメラ熱が今年に入って加速しており、電車とバスを乗り継いで行ける範囲では満足できなくなってきた。足があれば夜明けの富士山だって撮りにける。
・カメラ熱の延長で、もっと旅がしたい。旅先でレンタカーを運転できると世界が広がる。
・実家が東京郊外のニュータウンで、比較的車社会だが、両親がそろそろいい歳で、父の認知機能に不安を覚えるようになった。
・車を運転できる能力が自分にあるような気がする(なくても訓練すればできる気がする)

どれも大事な理由だけれど、えいや!とチャレンジするためには、最後のひとつが肝心。

運転できる、そんな気がする

実はかつて車の運転免許を持っていたことがある。
母の勧めと父のお金で、5年ほど前に近所の自動車学校に通って取得した。
その後2~3ヶ月ほど、実家の車を運転していたこともある。
しかしその後、悲劇、私は統合失調症を発症してしまい、運転どころの騒ぎではなくなってしまったのだ(ちなみに安心してください。外界が怖くて運転なんてする気は起きませんでしたので、危険運転はしていません)。

闘病とリハビリの日々の中で、運転免許を持っていたことなどすっかり忘れてしまい、お上に返納するまでもなく、更新のハガキに気づかず免許は失効。そして現在に至る。

病状は寛解維持と言われて久しかったけれど、ようやく落ち着ける仕事に就いたのが去年のことで、それまでは非合理的な業務を押し付けられてはミスをし、「これはきっと認知機能障害だ」と考えては自信を失くしていた。
それが仕事に恵まれたことで別人のように自信を取り戻し、難しいことも、複雑なオペレーションをひとりで回す日ごろの仕事でそうしているように、工夫をして乗り越えられるかもしれないと思うようになった。多分、チャレンジするなら今だ

そうして私は上司やチームメンバーに相談し、年末年始に2週間強の休みをもらうこととなり、コンビニのCMでお馴染み合宿免許斡旋業者に申し込みをしたのだった。

問題なし!のはずだけれど…

喜び勇んで申し込みをした…のだけれど。

適性検査のアンケートに「服薬していますか」とあり、正直に答えたところ、業者から電話がかかってきて病状を確認され、「警察に許可を得ないとご入校いただけません」と告げられる。

(うわぁ…バレて面倒なことになってしまった)

電話を切ったときの正直な気持ちだ。
その後すぐにGoogleに尋ねたところ、てんかん患者の事故が大きく報道された時期に法改正がされ、正直に申告しないと「1年以下の懲役か30万円以下の罰金」が課されると知り、ショックを受ける。

そうか、私って障害者だったんだなぁ…と、思い知る瞬間。
首に縄を付けられているような気持ちになり、警察から差別を受けるかもしれない不安で、その夜は少し心細くなった。
近頃公の機関が障害者差別を行っていた事実が明るみに出たことは、平和に暮らしている私の心にも影を落としていたと知る。

精神疾患のあるひとの免許取得に必要な手続き

具体的には双極性障害と統合失調症がこれに当たるらしいけれど、書類を用意して免許センターの「適正相談」を受ける必要がある。東京都以外でどうなのかはわからないけれど、一応私のケースを記しておく。

①警察署に診断書のフォーマットを取りに行き
②医師に診断書を作成してもらい
③本籍記載の住民票を取得し
④②③を持って免許センターの適正相談室へ行き質問に答え
⑤教習所に提出する「運転適性相談終了書」をもらって完了

以上、手間がかかる。
行程で自分の病気についての話を3回はすると思っておくといい(①②④のタイミングで話す)。

結構世界は優しくできている

各行程を不安に思いながらこなした結果。

①の警察署では、おじいさんに「病名はなんですか?」と聞かれ、「統合失調症です」と答えると「あぁ…そういうのね、ありますよ」と大きく大きくうなずかれフォーマットを渡される。

②のなじみの主治医との問診では、「あぁ…全然いいですよ、すぐ書きますし問題なく取得できると思います」と快諾した後、「そういえば仕事がリハビリになることが多いですが、茉生さんはどうですか?」と仕事の話に。

④の適正相談では、「原因は、ストレスか何かですか?」「あぁ、そうですね、セクハラとかパワハラとか…」「あぁ…(多くは語らなくていい、と手で制止)」その他通院についてなどいくつか質問を受けた後、「主治医の先生も大丈夫だと診断書に書いてくれていますよ」と励まされる。

おまわりさん、やさしかった!

大喜びで深大寺に寄り、交通安全守を買って帰宅。合宿免許斡旋業者に連絡して、無事教習所への入校が決まったのだった。あとはお金を払えば準備完了。

あまりに暗いので、筆を取る

SNSを調べてみたら、この病気についても、免許取得についても、とても悲観的な書き込みが多かった。
なので私はチャレンジするよ、と、インターネットの片隅に残しておくことにした。

次の更新は、12月の後半、山形の自動車学校に着いてからの予定。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?