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「ゲーム部プロジェクト」活動終了と、彼らが「Vtuber」文化に残したもの

 かつて、ハイレベルなゲーム実況動画や、脚本のある4人のコメディ的・アニメ的なショートドラマ動画などで、Vtuber界隈の注目を大きく集めた「ゲーム部プロジェクト」。

 その4人での最後の活動となる配信が、昨日(2/7)行われました。

久しぶりに4人全員での配信となった、最終日の彼らのチャンネル登録者数は、29.8万人

最盛期の2019年前半には最大45万人に達した彼らのチャンネル登録者数は、2019年4月の声優の労働問題、及び同年7月の声優の交代騒動以降、右肩下がりとなったまま現在に至り、最終的には全体のおよそ1/3が登録を解除した結果となりました。

かつてVtuber四天王を抜き、キズナアイに次ぐ総動画再生数で一躍Vtuber界隈の注目の的として世に躍り出た頃の勢いは、ついに戻りませんでした。

 また、最終日の配信「【生歌】ゲーム部ラストライブ!みんなありがとう!!【ゲーム部プロジェクト】」も、この記事を書いている時点(2/8 12:00~16:00)で、高評価5,000超に対し低評価660→700と、活動終了配信としては非常に多く、配信半日経過後も未だにじわじわと伸び続ける不気味な低評価数を残しています。

この数字は、現在も残るBrave group(旧Unlimited・株式会社バーチャルユーチューバー運営に対する視聴者側の不信感を象徴しているのでしょうか。それとも、他に何か別の理由があったのでしょうか。

配信中に流れるチャットには彼らへの不満を綴る声がほぼ見当たらないこと等から、私はその低評価の理由を、少なくとも「ラストライブ配信」の中には全く見いだせずにいます。

仮に、今なお続く声優交代からの不信感だけが、その低評価の理由の全てだとしたら、事態発生から1年半経ってなお、視聴者側の怒りが風化していないことに、若干の恐さを感じます。

なお、その騒動については、この記事ではあえて多くを触れません。詳しく知りたい方は「ゲーム部プロジェクト 炎上」等で検索してください。


 さて、そんな彼らの「ラストライブ」ですが、その内容はゲーム部が過去に「歌ってみた動画」で歌った楽曲を中心としたセットリストで綴られた、ポップで明るく元気に進行した1時間となりました。

背景画像で過去の配信を思い出したり、配信中にホロライブ所属のVtuber、夏色まつりの赤色スパチャが何度も飛び交う姿のブレなさ加減にクスッと来たり、歌われる懐かしい楽曲がちょっと感慨深かったりと、視聴者側も色々な思いで見つめたライブだったのではないでしょうか。

ラストも4,000人の同時接続者が見つめる中、ゲーム部4人全員で道明寺晴翔のお決まりの挨拶「サラバダー」で締めるなど、全体的にあまり活動終了の湿っぽさのない配信だったような気がします。

 個人的には「ゲーム部プロジェクト」活動終了後も、唯一、個人勢として今後も配信活動を続ける予定の桜樹みりあが、歌に、ダンスに、と頑張る姿が印象的でした。

彼女については今後も、その活躍を期待したいところです。


 さて、こんな感じで終わりを迎えてしまった「ゲーム部プロジェクト」ですが、彼らがVtuber文化に残した影響はとても大きいものがあります。

これについては以前コメント欄で触れた話題でもあるのですが、一応今回は節目という事で、改めて触れさせていただくと。


 その影響とは、Vtuberは「個人の魂の依り代」なのか、それとも「演者の交換が可能なアニメーションの延長的存在(CTuber)なのか」という問題についてです。

Brave group運営は過去の騒動から見ても、明確に後者の考え方の旗頭と言える存在の企業でした。

今回の「ゲーム部プロジェクト」も、そして中の人の歌手活動と契約問題により演者の交換を行い、別チャンネルでの配信を今も行っている同社の別事業RIOT MUSIC所属の「道明寺ここあ」なども、その代表例です。

 しかしその考え方は、騒動の火種が収まった後も「ゲーム部プロジェクト」が再度チャンネル登録者数や再生回数が盛り返すことがなかった、という今回の結果からみて、「Vtuberは演者の交換が可能」という後者のスタンスは、ついに視聴者の支持を得られなかったことが今回明らかになったように思います。

そして、色々とフワッとした定義づけの存在であるVtuberではありますが、今回の「ゲーム部プロジェクト」活動終了で、少なくとも「アバターと演者については一度結びついたら、まず切り離せないのがVtuberなんだ」という共通認識がVtuber界隈には定義されてしまったのではないかな?と感じています。

そして、この定義は必ずしも喜ばしい事ばかりではないように思います。


 視聴者にとってこの定義は、思い入れのあるVtuberの演者が取り替えられにくくなったこととして喜ばしく受け止められることでしょう。

しかし、企業側からすればこの定義は、演者の選定を間違うとその時点でビジネスモデルが破綻する、Vtuber業界への新規参入のハードルの高さを示す要因でしかありません。

また、演者に何かあればどんなVtuberでも即活動が止まってしまうという事は、企業側の事業の安定性という意味でも、視聴者にコンテンツを届ける継続性という意味でも、演者がVtuber以外の人生の選択肢を容易に選びにくくなるという意味においても、決してプラス要因ではないような気がします。

もちろん「Vtuberは演者の交換が可能」と企業側に安直に捉えられるよりは、ずっと良いことではあるのですが。


もっとも、Brave group運営が打ち出した「CTuber」という「Vtuberよりキャラクターコンテンツの意味合いが強いYouTuber」という概念は、例えばアニメの声優が体調不良等で交代するような、致し方ない事情によるものではなく、「自社内で起きたパワハラから声優交代までの一連の騒動を糊塗する為に生まれた概念」として視聴者側に受け止められてしまった印象があります。

その為、炎上の危険性はあるものの「演者の交換が可能であれば、不測の事態があってもコンテンツを長期間運営できる」という本来のメリットに視聴者の目が向かなかったことには、少々残念な思いもあります。

 演者に何か理由があった時にVtuberが半永久的なコンテンツとして生き続けていけるようになるためにも、また演者がVtuberであった過去を自身のキャリアとして職歴に書ける未来を迎えるためなどにも、この「CTuber」という概念については、いつか見直される日がくればいいなと、個人的には思います。



 さて、「Vtuberは演者の交換がますます困難な印象」となったかもしれないVtuber業界は、これからどうなっていくのでしょう。

昨年12月末のupd8の終了に代表される「個人Vtuberの参入をサポートしてくれる組織の減少」や、今回のBrave groupの件に代表される「企業所属Vtuberの演者雇用の難しさ」は明らかにVtuber業界の規模を縮小させる流れです。

2021年のVtuber業界はどう変わるでしょうのか。
少なくとも、今のところ新規参入という点に関しては、個人・企業共にあまり好材料が見当たらないのが怖いなぁと私は思っています。

まあ、なにはともあれ。

「ゲーム部プロジェクト」。
動画主流のVtuber黎明期を輝かしく駆け抜け、多くの新しい視聴者をVtuber業界に呼び込んだその4人組は、後発のVtuberそのものの在り方にも一石を投じた、特別な存在だったのではないでしょうか。

紆余曲折はありましたが、そんな特別な存在のVtuberという難しい立ち位置を最後までやり切ってくれた演者の方については、本当に感謝しかありません。

今後迎えるであろう新しい活動場所でも是非頑張って欲しいと思います。


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