今宵音楽はずっとずっとやまない ~星街すいせい「THE FIRST TAKE」出演感想~

様々な有名アーティスト達の一発撮りパフォーマンス、その緊張感と張りつめた空気感を様々な角度から鮮明に届けてくれる、有名なYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」。

ある意味で最も生々しいアーティスト達の一瞬を切り取るそのチャンネルに、現時点で最も生々しさからかけ離れたパフォーマーである「Vtuber」という存在が登場したことには、色々な思いを抱いた人がいたのではないかと思います。

それは「Vtuber」という存在が好きで、日頃からその存在を追いかけている私のような、偏って「Vtuber」に対して好意的な人間ですら同様でした。

私は、今回の「THE FIRST TAKE」に、初の「Vtuber」として「星街すいせい」が出演することには、ちょっとした不安を感じずにはいられませんでした。



誰かが新しいことを始めたとき、それに対する批判が生まれることは決して避けられないものだと思います。

また、「Vtuber」というコンテンツが、ようやく世間に用語として存在を認知された程度の、まだ一部の人だけが楽しんでいる若く閉じた文化だということも、一ファンとしてこの数年、ことあるごとに感じています。

そんな、まだまだ万人向けとは言い難いコンテンツと、「THE FIRST TAKE」というメジャーなアーティストばかりを取り上げるチャンネルの邂逅とも言うべき、今回の『星街すいせい「THE FIRST TAKE」出演』が、いったいどんな反応をもって迎えられるのか。

2022/1/20 21:55頃。
「THE FIRST TAKE」配信開始5分前に、私がたどり着いたYouTubeの待機枠。

4万人が既に配信を待っていたその枠のチャット欄は、そんな私の不安とは少しズレた形で荒れていました。



個人的に私がそこでショックだったのは、そのチャット欄の荒れ方が「絵じゃん」「やっぱ一発撮りじゃないんじゃないの?」といった、いわゆる「Vtuber」に馴染みのない人から発せられた風のもの、「Vtuber」のことをそもそも理解しようとしていない人からの批判、ばかりではなかったことでした。

その時、チャット欄を流れていたのは、特定の絵文字の連打であったり、他社Vtuber事務所を宣伝するものであったり、焚きつける目的があけすけな人であったり、それに対する自治コメントであったりと、いかにも日頃から「Vtuber」というコンテンツに慣れ親しんだ人たちから発せられたもので。

それはネット発のオタクコンテンツの反応としては、ある意味通常通りの反応だったのかもしれませんが、例えるならそれは「スポーツ観戦に行った同じチームを応援する仲間がスタジアムにごみを投げ捨てる光景」のようで。

このことには改めて、恥ずかしいようなガッカリした気持ちになりました。

「Vtuber」が「THE FIRST TAKE」を日頃見るような人達に受け入れられるかどうか、を心配していた私にとって、この時のチャット欄の荒れようは、もはやそれ以前の問題でした。

このときの唯一の救いは『YouTube待機枠で書き込まれた荒らしチャットは動画配信開始後には世間の目にさらされなくなること』でしたが、この調子だと動画配信後のコメント欄も同様に荒れるのではないか?と、心配したことを覚えています。

私の『星街すいせいの出演する「THE FIRST TAKE」』視聴の開幕は、そんな不安とファンへの失望の中、静かに始まりました。



白い背景の中、マイク1本の前に立つ彼女の姿は、少しだけいつもの「THE FIRST TAKE」とは違う光景でしたが、それほど違和感のないものでした。

頭にはリアルな質感のSONYのヘッドホン、ヘッドホンコードと揺れる髪の毛、Vtuberの歌唱カットとしては非常に珍しい左側面から見る3Dアバター、少しだけ緊張感が伝わる、3Dアバターの彼女の目立つまばたき。

そして、「THE FIRST TAKE」の動画にはよくある、冒頭の挨拶も、セリフも、咳払いや声のチューニングをする様子もなく、深めの深呼吸一つから彼女の歌は始まりました。



歌われた歌は、星街すいせいの代表曲「Stellar Stellar」のオリジナルアコースティックアレンジ。

ピアノとアコースティックギターの伴奏のカットが入ると、そこには「Stellar Stellar」の作編曲をし、ユニット「Midnight Grand Orchestra」でも星街すいせいとタッグを組むサウンドプロデューサーのTAKU INOUEの姿もあったりと、3D技術的にも、楽曲的にも、とにかくいろんなところに目が行った開幕ではありましたが、次第にそういったあれこれが気にならなくなるほど、彼女の歌には独特の迫力と開放感、そして視聴者の心を揺さぶるような何かがあったような気がしました。

気がつけば冒頭に気になっていたチャット欄などろくに見る余裕すらもありませんでした。そして、終わってみれば実にあっという間の6分間でした。
しかし、その6分間は、非常に独特の何かこみあげてくるものを感じた、特別な時間だったように思います。



Vtuberのコンテンツとしてよくある「歌ってみた動画」とはまた違った視聴感。

そこには、様々なアーティスト同様の緊張感と空気感、そしてまるで「Vtuber」らしからぬ「THE FIRST TAKE」という舞台ならではの生々しさから産まれた感動が、確かに存在したように思います。

そしてそれらのことは、最大で15万人を超えた動画の同時視聴者数や、私の開幕前の杞憂とは反し、配信終了後に数多く寄せられたコメント欄の暖かいコメント、そして、海外の「THE FIRST TAKE」の視聴感想動画、twitter世界トレンドの上位を埋め尽くした関連ワード、などから、多くの人に伝わったのではないかなと、そう感じました。



さて、配信開始から4時間で100万再生、高評価もあっという間に20万を超え、動画コメントも1万件を超えるという、結果を見れば今のところ大反響の星街すいせい「THE FIRST TAKE」の「Stellar Stellar」回でしたが、「THE FIRST TAKE」という番組はだいたいひとアーティストから2曲収録をする番組だったりします。

もし次回があれば、そのとき星街すいせいは、どんな様子を3Dアバターの変化で見せ、どんな曲をどんな風に歌うのかも、今から楽しみにしたいところです。

なんにしても、Vtuberの世界がまた一つ広がった。
そんなことを感じた、とても素晴らしい夜でした。



<参考>

RealSound

星街すいせい、『THE FIRST TAKE』初登場 「Stellar Stellar」を携え史上初VTuberの一発撮りに挑む
https://realsound.jp/2023/01/post-1239825.html

「THE FIRST TAKE」OFFICIAL

【YouTube】
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q
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