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虹河ラキの卒業 ~Vtuberの卒業の定義とその魂の未来をかえたカエル~

 スロットメーカー、山佐株式会社の運営する山佐スロワールドスロプラスの公式サポーターとして誕生したupd8所属のVtuber、虹河ラキ

11/19は、そんな彼女の卒業記念配信の日でした。

 山佐株式会社のマスコットであるカエルの衣装に身を包んだ彼女は、Vtuber文化の黎明期ともいえる2018年の登場から、サントリー所属の燦鳥ノムや、ロート製薬所属の根羽清ココロらと並ぶ、企業がスポンサーとして運営するVtuberの代表例として、有名な存在でした。

 この企業スポンサーのVtuberという存在は、Vtuberという一般には当時それほど耳なじみのない新しい文化を世間に周知するという点で、非常に大きく活躍した存在ではなかったでしょうか。

 また、企業の広報活動の為に活躍するVtuberという存在は、Vtuberによる案件放送という、今では一般的になりつつある新時代の宣伝の形を切り開いた存在とも言えるような気がします。

潤沢な資金力に後押しされ、高い技術力でアバターを構成され、華やかな舞台で歌い、踊る、企業の新時代のマスコットキャラクター

そんな企業スポンサーのVtuberは、Vtuberの歴史の序章に一つの流れを作った魅力的な存在でした。


 しかしながら彼女たちには、外部の音楽イベント等へ参加して企業の広報活動をしたり、自社コンテンツ製品の宣伝動画をコンスタントに配信しなければならない、などの企業プロモーション活動を常に活動の主軸にするという大きな課題を背負った存在でもありました。

 結果として彼女たちはその大きな課題の為に、バラエティやゲーム実況、生配信が主体の現在のVtuber業界の流行とはあまりうまく存在がマッチせず、他のVtuberほどチャンネル登録者数が伸びない、という状態が生まれています。

 特に虹河ラキに関しては、親企業がエンターテイメント産業であるスロット会社であるがゆえに、職務として必須だったスロット配信が、ゲーム配信連投が普通になりつつある現環境とマッチしなかったことが、彼女の視聴者の客層や投稿頻度、動画再生数やチャンネル登録者獲得の伸び悩みなどに大きい影響を与えていたように感じられました。

もっとも、彼女の存在意義そして主目的はあくまで「山佐株式会社の宣伝、山佐スロワールドスロプラスの広報」であった為、他のVtuberとチャンネル登録者数で比較することは、そもそも誤りなのかもしれません。

事実、今回の彼女の卒業の主要因は、スポンサー山佐株式会社の遊技機事業再編に伴って、サポーターであったコンテンツの一つ「山佐スロワールド」が来年1月末に全サービス終了、新規登録を今月25日に終了することが大きくかかわっているものと推察されます。

よって彼女の卒業も再生数や登録者数は一切関係なく、無事にその役目をまっとうしたがゆえの卒業、なのかもしれません。


そんな彼女の卒業する最後の一日は、色々なものが公開された一日でした。

まずは、彼女が過去にニコニコで有料配信していた3Dソロライブ【2020.08.19「ぴょこフェス2020」ノーカット完全版】無料完全公開

私もこちらは今回初めて見たのですが、映像的にも、楽曲的にも素晴らしいライブだったと思います。オフィシャルファンクラブの総意により無料公開する、という公開に至った背景も素敵だと思いました。


そして次は、前述の3Dライブの本編最後でも歌われていたオリジナル楽曲【Official Music Video/MV】虹河ラキ×TOKYOWAVE! Feat.Neko Hacker第6弾「ありがとう」公開

こちらの歌ってみた動画もハイクオリティな3Dでの美しい演出の映像に驚きました。歌詞が卒業ともかなり親和性が高い曲でしたので、未視聴の方は出来れば聞いていただきたいと思います。


そして最後、卒業配信の中でなんと虹河ラキ中の人公開

Vtuber界初、とご本人もおっしゃっていましたが、虹河ラキの魂とも言える演者の声優「八木侑紀」さんがなんとこの配信中に登場。

オーディション話から、手探りでVtuber黎明期をスタッフさんと駆け抜けた話、よく飲酒するVtuber虹河ラキを演じるために、本人はお酒を飲むことについて一切ツイートを控えていた事、などさまざまな話を聞かせていただきました。

通常、Vtuberの魂は表に出すべきではないもの、という事は配信中でも八木さん自身が語っていらっしゃいましたが。

それでもあえて魂を今回公開したことで、これからはVtuberからマスコットキャラクターに戻る虹河ラキという存在のCV八木侑紀という声優の名前を記載することで、今後とも虹河ラキと一緒に歩きながら、声優の八木侑紀虹河ラキを応援していけるようになる、と嬉しそうに語る八木さんと、それを祝福するコメント欄には何か温かい絆のようなものを感じられたような気がします。


そして、もう一つ。

 これまでVtuberの演者は、その魂を秘匿するという性質上、自分の仕事の実績にVtuberであった歴史を記載することも、誰かと振り返ることも出来ませんでした。

また、視聴者サイドも、これまでは応援していたVtuberが卒業するということは、いくつかの例外を除いてはその存在が以降永遠に失われてしまう存在の死を看取ることと同義でした。

しかし、今回の虹河ラキ八木さんのケースは、Vtuberの魂がVtuberであることを終えた時に、その時までに積み上げてきたものが魂に財産として残り、視聴者側からも魂の在処が失われなかった幸せなケースの結末として、今後のVtuberの新たな終活方法を示す一つの道しるべになったのではないかと思います。

虹河ラキという存在はVtuberの中で初めて、卒業が物語の終わりではなく、次の物語の始まりになったVtuberとして、Vtuberの歴史に残る存在になったのかもしれません。


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