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最高のマーケティングについて考えてみる【中編】

おはようございます。現役信用金庫マン 兼 中小企業診断士事務所代表の山西です。当noteでは、経営力強化につながる情報を経営者や支援機関に向けて発信しています。

前回は、最高のマーケティングを考える上で、マーケティングの正体について考えてみました。

前回までのまとめ

マーケット・・・需要と供給を一致させる場
マーケティングの正体・・・消費者の課題発見から解決に至る一連の仕組みづくり

今回は、最高のマーケティングが実現された状態とはどんな状態なのか、について、つらつらと書いていきます。


最高のマーケティングが実現された状態とは

どうなっていたら最高のマーケティングが実現された状態だと言えるでしょうか?

市場構造から考える

前回、市場の構造は「需要」と「供給」という2つの要素で成り立っているとお話ししました。そして、需要が供給で"ちょうど"満たされた瞬間だけ市場が成り立つ訳です。

それを考えると、過剰なサービスやとにかく速い提供が必ずしも良いとは言えないことが分かります。

「ちょうど」と言うのは、供給物の「質」「量」「タイミング」が需要と一致していることを指します。

質と量は分かりやすいですが、認識しづらいのがこの「タイミング」。

あくまで消費者が欲したタイミングで供給できる必要があるので、それより遅れるのはもちろん、早まるのも良いマーケティングだとは言えないでしょう。

よくあるのが製造業での作り過ぎ問題。要望があった際にすぐに対応できるよう、暇な時にたくさん作っておくケースが散見されます。また従業員が暇な時に、手持ち無沙汰を回避するために作り置くパターンもあります。

このパターンは「作りすぎのムダ」「在庫のムダ」と呼ばれ、経営に悪影響を与えます。「在庫=現金の仮の姿」なので、手元現預金が減少しますし、在庫を置くスペースを確保する無駄も発生してしまいます。

トヨタ生産方式では、これらに代表されるムダを解消するために「ジャストインタイム」という概念を打ち出しています。

ジャストインタイムとは、「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」というコンセプトです(日本語で「ちょうど間に合う」の意)。これは、先ほど「『ちょうど』と言うのは、供給物の「質」「量」「タイミング」が需要と一致していること」と説明したことと同じ概念です。

需要を起点として、その需要に対してジャストインタイムで供給することで、ムダを無くすことができるのです。

ジャストインタイム実現のために、「後工程引き取り方式」が使われますが、これは、後工程が「必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ」、前工程から引き取る方法のことです。

後工程の最後にいるのがお客様=需要です。要は、後工程引き取り方式というのは、お客様の需要に応じて生産しましょう、という生産方式なのです。

現代最強マーケターの森岡毅氏も「作ったものを売る」のはなく、「売れるものを作る」(需要に応じて供給する)ことに取組むことで、USJの再生で大成功を収めました。

2010年以前は3割程度だった新プロジェクトの成功確率が、最近5年間の平均では97%と飛躍的に改善されました。USJは消費者視点を大切にして、作ったものを売る会社から、売れるものを作る会社に変わったのです。これこそがUSJ最大の変化です。究極的に変わったのはこのひとつだけ。消費者価値を高めるように全体が機能する会社になったのです。

TDLを抜いたUSJ、いったい何を変えたのか(https://toyokeizai.net/articles/-/115879?page=4)

「最高のマーケティングが実現された状態」を整理してみる

このようにジャストインタイムが実現された状態=最高のマーケティングと言えるでしょう。

最高のマーケティング
・・・需要の質・量・タイミングに合わせて、供給を完全に一致させた状況(ジャストインタイム)

そして、前回、需要とは消費者が抱える課題を解決する必要性のこと、とお話ししました。また、供給はその課題の解決策でもあります。それを踏まえ、最高のマーケティングを分かりやすく定義し直すと以下のようになります。

最高のマーケティング
・・・消費者の課題が発生した瞬間に、ちょうど解決されること

以上の定義に基づいて考えてみると、消費者が課題を抱えたことを認識した時点で、すでに最高のマーケティングが実現できていないのだと分かります。

例えば、消費者が「お腹がすいた」と思った瞬間にすでにお腹が満たされているのが、最高のマーケティングが実現された状態です。

繰り返しになりますが、あくまで「ちょうど」というのがポイント。早すぎず遅すぎず、多すぎず少なすぎず。

分野は違いますが、総合格闘家のコナー・マクレガーは以下のような言葉を残しています。「ちょうど」がポイントとなる最高のマーケティングを表現するのにぴったりな言葉だと思います。

Precision beats power, and timing beats speed
(精度はパワーに勝り、タイミングはスピードに勝る)

コナー・マクレガー(総合格闘家)

今回のまとめ

最高のマーケティング
・・・消費者の課題が発生した瞬間に、ちょうど解決されること

次回予告

次回は、後編として、最高のマーケティングの実現するための要件について考えていきます。12月2日(土)投稿予定ですので、ぜひご覧下さい。

当noteでは、毎週土曜日に、経営者や経営支援者に向けた経営力強化につながる投稿を行っています。仕事のご依頼、お問い合わせは画面下の「クリエイターへのお問い合わせ」よりお願いします。

投稿者(山西良明)プロフィール

強い企業を作る」ことを理念に、中小企業の経営力強化に向けた支援をしています。

【経歴】
・現役信用金庫マン
 2014年より信用金庫で勤務中。営業、業務推進、融資審査、事業支援を経験。
・中小企業診断士事務所代表
 信用金庫で働きながら、2021年に中小企業診断士として個人事務所を開業。認定経営革新等支援機関として登録。

【強み】
①「資金繰り支援」と「本業支援」という両輪の経験を「現在進行形で」持っていること
徹頭徹尾やり切る性格。広く色々なことができるタイプでは無いですが、限られたことを徹底してやり尽くす性格です。

【現在受け付けている業務内容】
①経営パートナー契約
 中小企業様とのパートナー契約により、経営力強化を目的として、毎月訪問(又はリモート相談)で支援をしています。
事業計画書協同策定・実行支援
 創業/経営改善/事業再生等に向けた経営力強化支援を行っています。事業者様とともに事業内容を見直し、共同で事業計画書を策定、フォローしています。
資金繰り改善支援
 資金繰りに関する分析および提案、実行・フォローに至るまでのトータル支援をしています。資金繰り改善支援の一環として、融資承諾支援、補助金申請支援も行っています。
 (1)資金調達支援
  利益向上を目的としたご融資の承諾に向けたご支援を行います。お借入に関する事業計画書(設備投資計画や創業計画書等)策定支援および交渉に関する諸支援です。
 (2)補助金採択支援
  利益向上を目的とした補助金採択に向けたご支援を行っています。持続化補助金、ものづくり補助金、事業再構築補助金など。メインは補助事業計画書策定支援です。補助金交付決定金額の10%を基本とした成功報酬制で受け付けています。

【主な保有資格】
・中小企業診断士
 コンサルタントとしての唯一の国家資格。2017年取得
・販売士(リテールマーケティング)1級
 BtoCのマーケティング資格。2018年取得
・応用情報技術者
 IT系国家資格。2021年取得
・認定事業再生士
 事業再生の国際資格。2022年取得

【尊敬する人】
・三枝 匡(事業再生専門家)
・森岡 毅(マーケター)

【趣味】
・マラソン
 地元大会で2時間30分切りでの優勝を目指し、年365日走っています。
・読書
 海外SF、文芸誌、ビジネス書を読みます。愛読書は『三体』『V字回復の経営』

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