今日の読書『原爆初動調査 隠された真実』
「オッペンハイマー」の公開に併せてこの記事を書く予定だったのですが、かなりズレ込んでしまいました。
広島・長崎に原爆が投下された際、米軍とソ連によって秘密裏に調査された「残留放射線の測定」と隠蔽の事実を明らかにし、それが被爆者と核保有国どう影響したのかに迫っています。
「原子爆弾を高空(広島・長崎に投下された高度)で爆発させれば地上での残留放射線はほぼ一切ない」――こう主張したのはオッペンハイマーです。しかし当然そのようなことはなく、爆発の被害を地形などで逃れた一部地域では「黒い雨」による非常に高い放射能が検出され、住民の多くに白血球の増加などの健康被害が生じていました。しかし政府と占領軍はそれらの事実を隠蔽しつつも、住民に継続調査を実施していました。
本の最後では、「原爆によって生じるのは初期放射線のみで、こうした残留放射線が存在しない」としたオッペンハイマーの説は、にわかには信じがたい話ですが、実のところ今も米・露などの核保有国の戦略に適用されていることが両国の高官の話により明らかになります。
原爆の被害を矮小化し、「人道的な兵器」として正当化に繋げる言説ですし、投下後に進軍する自国の兵士に降りかかる健康被害すら無視している状況であると結論づけることができるでしょう。