杉田久女3

 ユダともならず
 春やむかしからむらさきあせぬ袷見よ

 昭和11(1936)年『ホトトギス』10月号に自分の除名社告を見た久女は、おそらく我が目を疑い言葉を失ったことだろうと想像できる。除名から少し経ち落ち着きを取り戻した頃、久女は、除名は自分の去就について、虚子に試されているのだと考えた。だから、いつの日か虚子の勘気が解けて、再び同人に返り咲く日が来ることを信じていたようで、最後まで他の結社に移ることはしなかった。
「ユダともならず」という前書きは、除名されても『ホトトギス』を裏切る者ではないとの思いがあったに違いない。
 私は、俳句についてはさほどよく分からないので、なぜ高浜虚子が杉田久女を「ホトドキス」から除名したのかは分からない。しかし、久女の才能のすごさを考えると、何か大きな問題がない限り、師が弟子を見限ることはないだろうから、虚子だけがその理由を知っていたとしか思えない。


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