八風の戒め

八風の戒め
 
世の中にはいろいろな教えがある。
私は無知なので最近まで知らなかったのだが、『八風』の戒めというものがある。
 
「利・衰・毀・誉・称・譏・苦・楽」
 
「利」(うるおい)・・・目先の利欲にとらわれる姿
「衰」(おとろえ)・・・老衰や生活に破れた姿
「毀」(やぶれ)・・・・他人に批判されて自己の信念を変えてしまう姿。
「誉」(ほまれ)・・・・名聞名利にとらわれ、我を忘れた姿。
「称」(たたえ)・・・・賞賛されて増上漫になり、自分を見失うことをいう。
「譏」(そしり)・・・・他人からそしられ、自分を見失うことをいう。
「苦」(くるしみ)・・・人生の苦境に負けてしまった姿。
「楽」(たのしみ)・・・享楽に負けてしまった姿。
 
日蓮が四条頼基(金吾)という有力な檀家に手紙を書いたそうだ。
 
「賢人は、八風という人の心を煽り立てる八つの風におかされることがないからこそ、賢人と言われるのです。その風とは、利(リ=うるおい)・衰(スイ=おとろい)・毀(キ:やぶれ)・誉(ヨ:ほまれ)・称(ショウ:たたえ)・譏(キ:そしり)・苦(ク:くるしみ)・楽(ラク:たのしみ)の八つです。すなわち、自分が潤っている時にも喜んで有頂天にならず、逆に勢いの衰えている時にも嘆かない(同様に、誉められてものぼせず、悪口を言われても自信を失わず、称えられても浮つかず、批判されても自分を失わず、苦しい時に頑張り、楽な時に心を引き締める)ということです。この八風に心がおかされない人を仏天は必ず守って下さいます」
 
 この教えなどは宗教家の言葉というよりも、処世訓としてなかなかよいものだと思う。私は日蓮のような激しい人は嫌いだが、激しいイメージしかない日蓮が、このような教えを説いていたとは意外な気がする。
 
 いつぞやは六然訓を紹介したが、この八風の戒めも心に染みてくる。人は得意の時も失意の時もあるが、それに動揺しないで驕らず、焦らず地道な努力が必要だという点について、昔の知識人というものは、中国人であろうと日本人であろうと同じようなことを言うものだと感心している。

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